沖縄県内では電力卸売市場が無い、本州や九州からの送電線が無いといった事情により、沖縄県内で必要な電気は県内で発電する必要があります。
そのため、長らく家庭向けの新電力が存在しない状態が続いています。
しかし、2018年にコープおきなわが家庭向け新電力に参入する予定であるなど、沖縄県内でも電力会社を選べる時代が近づいています。
沖縄電力では2017年4月から、Eeホームホリデー、Eeホームフラットという2つのサービスを開始し、沖縄電力だけでも4種類の料金プランを選ぶことができます。
この記事ではそれぞれの料金プランのメリット、どのような方に向いているかという点について、解説していきます。
なお、本記事で説明する料金は特記の無い限り、すべて消費税込です。
沖縄電力
沖縄電力は、沖縄県を営業エリアとする電力会社です。電源構成は、石炭が65%、LNGが24%、石油が6%、FIT電力5%となっています。ほとんどが火力発電であり、中でも石炭の比率が全体の3分の2と高くなっていることが特徴です。その特徴を説明していきましょう。
契約可能エリア
契約可能エリアは、沖縄県となっています。
そのため南西諸島でも、沖縄電力のエリアになるとは限りません。
例えば与論島のように鹿児島県内であれば、沖縄本島に近い場合でも九州電力のエリアとなります。
また沖縄県の人口は約140万人で、このうち沖縄本島には9割以上の129万人が居住しています。
料金体系
沖縄県には離島が多く存在しています。このため、沖縄本島と離島で異なる料金体系を採っています。
本記事では、沖縄本島向けの料金プランを解説していきます。
料金の支払い方法
口座振替やクレジットカード払いの他、請求書を発行してもらいコンビニ等で支払う方法があります。沖縄電力の窓口でも支払いが可能です。
4種類の料金プラン
沖縄電力の料金プランは以下の4種類ありますが、その中には他社と異なる料金体系を採用しているものがあります。それぞれの料金プランについて解説します。
(1)従量電灯
(2)時間帯別電灯
(3)Eeホームホリデー
(4)Eeホームフラット
このうち従量電灯以外のプランは、エコキュートや電気温水器をお使いの場合にお得なプランです。
1.従量電灯
従量電灯には基本料金はなく、10kWhまでの最低料金が定められています。また電力量料金は以下の通りです。
10kWhまで…一律395.08円
10kWh超120kWhまでの部分…1kWh当たり22.53円
120kWh超300kWhまでの部分…1kWh当たり27.97円
300kWh超の部分…1kWh当たり29.91円
2.時間帯別電灯
時間帯別電灯には基本料金があり、1契約842.40円となっています。
また電力量料金は昼間時間と夜間時間に分かれており、それぞれ以下の通りです。
(1)昼間時間(7時から23時まで)
90kWhまで…1kWh当たり26.10円
90kWh超230kWhまでの部分…1kWh当たり32.42円
230kWh超の部分…1kWh当たり34.66円
(2)夜間時間(23時から7時まで)
一律、1kWh当たり11.82円
なお、以下に該当する機器をお持ちの場合は、機器のkW数に応じて割引が受けられます。
(1)5時間通電機器割引…1kW当たり216円
(2)通電制御型夜間蓄熱式機器割引…1kW当たり162円
3.Eeホームホリデー
Eeホームホリデーには基本料金があり、1契約1,620円となっています。
また電力量料金は昼間時間、生活時間、夜間時間に分かれており、それぞれ以下の通りです。
昼間時間はさらに、7月から9月までの夏季と、それ以外のその他季に分かれています。
(1)昼間時間(平日10時から17時まで)
7月から9月までの夏季は1kWh当たり38.65円、その他季は1kWh当たり35.23円となっています。
(2)生活時間(7時から23時まで。但し昼間時間に該当する時間帯を除く)
通年で、1kWh当たり26.71円となっています。
(3)夜間時間(23時から7時まで)
通年で、1kWh当たり10.97円となっています。
なお、オール電化の場合はEeプラン割引として10%の割引が受けられます。但し割引上限額は3,240円です。
4.Eeホームフラット
Eeホームフラットには基本料金があり、1契約1,620円となっています。
また電力量料金は昼間時間、夜間時間に分かれており、それぞれ以下の通りです。
(1)昼間時間(7時から23時まで)
通年で、1kWh当たり28.62円となっています。
(2)夜間時間(23時から7時まで)
通年で、1kWh当たり10.97円となっています。
なお、オール電化の場合はEeプラン割引として10%の割引が受けられます。但し割引上限額は3,240円です。
燃料費調整額、再生可能エネルギー発電促進賦課金について
燃料費調整額
燃料費調整額は、毎月変更されます。2017年9月分の燃料費調整額は、1kWh当たり1.12円の減額となります。
但し従量電灯の場合、10kWhまでの部分の燃料費調整額は一律で11.16円の減額となります。
再生可能エネルギー発電促進賦課金
再生可能エネルギー発電促進賦課金は、1kWh当たり2.64円です。但し従量電灯の場合、10kWhまでは一律26.4円となります。
各プランの料金を比較!
ここまで沖縄電力が提供する4つのプランを比較してきました。それぞれの料金プランを比較し、各プランはどのような人に向いているのかを示していきましょう。
なお沖縄電力の各プラン間で、燃料費調整額や再生可能エネルギー発電促進賦課金はほぼ同一のため、結果には影響を与えません。従って、これ以降の比較では基本料金と電力量料金の合計額で比較することとします。
1.夜間帯と昼間帯の電力消費量割合を仮定する
沖縄電力には、一部のプランで昼間時間と夜間時間等、時間帯別の料金プランがあります。そのため料金比較をする上では、1日の中で昼間時間帯と夜間時間帯での電力消費量の割合がどれだけなのかを示しておく必要があります。
また、夏季と冬季で、時間帯別の電力消費量の割合には違いがないのでしょうか。この点についても確認しておく必要があります。
時間帯別の電力消費量割合データ
家庭での時間帯別の電力消費量を示したデータはありますが、皆様が簡単に見つけられるデータは静岡大学工学部システム工学科が公開していた「ある一般家庭の電力・給湯使用量」があります。
この例では、神奈川県等で4人家族で暮らしている場合の電力消費量と、季節・時間帯別のパターンが掲載されています。
沖縄の冬は、関東のどの季節?
沖縄県は、本州と気候は大きく異なります。そのため、このデータをそのまま使う訳にはいきません。沖縄の厳冬期は、関東のどの時期の季節かを調べておく必要があります。
気象庁では、各地点の過去の気象データをダウンロードできるサービスがあります。このデータを調べてみると、沖縄の厳冬期の平均気温は神奈川での4月と5月の中間程度と考えることができます。冬なのでもっと寒いかと思いがちですので、意外な結果ですね。
また夏季は、沖縄でも神奈川でも大きな気温の違いはありません。
沖縄の夏季と冬季、時間帯別の電力消費量の割合は?
以上の結果から、「時間帯別の電力消費量割合データ」で示したデータについて、冬季は5月のデータ、夏季は8月の数字を使うことにします。
沖縄電力の提供するプランに合わせて、夏季時間を7時から23時までの16時間、夜間時間を23時から7時までの8時間とします。
データを分析していくと季節によって大きな違いはなく、夜間時間8時間分の電気使用量を1とすると、昼間時間16時間分の電気使用量は2.5~3といった割合となります。
沖縄県は夜型の生活パターンになりがちということも踏まえ、これから先の検討では、昼間:夜間=2.5:1として進めていきます。
なお、Eeホームホリデーでは平日の10時~17時の料金単価が高くなっています。10時から17時までの7時間の電気使用量と、7時から10時・17時から23時までの9時間の電気使用量の割合は、1対3の割合となっています。
時間帯別の電力消費量を踏まえた、1日の平均単価は?
昼間16時間分の電気使用量と、夜間8時間分の電気使用量の割合は2.5対1ということ、Eeホームホリデーの場合の時間帯別割合をベースにして考えると、時間帯別電灯、Eeホームホリデー、Eeホームフラットの平均単価は以下の通りとなります。
・時間帯別電灯
基本料金 842.40円
90kWhまで…1kWh当たり22.02円
90kWh超230kWhまでの部分…1kWh当たり26.53円
230kWh超の部分…1kWh当たり28.13円
・Eeホームホリデー、Eeホームフラット
基本料金 1,620円
Eeホームホリデー…1kWh当たり23.89円
Eeホームフラット…1kWh当たり23.58円
何も割引を受けられない場合
エコキュートや電気温水器が無かったり、オール電化でないご家庭の場合は、時間帯別電灯やEeホームの選択約款によりこのプランを利用することができません。
従って、従量電灯のみ申込み可能となります。
エコキュートや電気温水器、オール電化割引を受けられる場合
沖縄電力では、料金プランによりエコキュートや電気温水器、オール電化の場合に割引が受けられることになっています。
このケースを考慮して、料金比較をしてみましょう。
時間帯別電灯の場合
時間帯別電灯の場合、5時間通電機器割引は1kW当たり216円、通電制御型夜間蓄熱式機器割引は1kW当たり162円となります。
従量電灯と時間帯別電灯の料金差が最も開くのは120kWhの場合で、時間帯別電灯が747円高くなります。このことから、
・5時間通電機器割引適用の場合は、4kW以上
・通電制御型夜間蓄熱式機器割引適用の場合は、5kW以上
の機器を設置している場合、時間帯別電灯の方が安くなります。
従って、時間帯別電灯プランはエコキュートや電気温水器を使用している人に向いているプランといえます。
Eeホームフラット、Eeホームホリデーの場合
Eeホームフラット、Eeホームホリデーの場合は、オール電化の場合はEeプラン割引として10%の割引が受けられます。但し割引上限額は3,240円です。
Eeプランの平均単価が10%割引となることにより、平均単価は21.22円となり、従量電灯の単価よりも安くなります。但しEeプランには基本料金がありますから、電力量が少ない場合は安くなりません。
計算すると電力量が309kWh以上の場合、Eeホームフラットの方が安くなります。2人世帯の平均使用量とほぼ同じですので、オール電化のご家庭であればEeホームフラットは向いているといえるでしょう。
また上記条件の場合、Eeホームホリデーの平均単価はEeホームフラットよりも高くなっています。ということは、平日10時から17時までに電気を使わない家庭しかメリットが無いといえるでしょう。
実際、10時から17時までの7時間の電気使用量と、7時から10時・17時から23時までの9時間の電気使用量の割合が1対4の割合となった場合、Eeホームホリデーの平均単価は1kWh当たり21.20円となります。
従ってEeホームホリデーは、共働き等で平日日中が不在というご家庭に向いているプランとなるでしょう。
5.まとめ
ここまで、沖縄電力の各料金プランについて、比較してきました。
まとめますと、以下の通りとなります。
(1)エコキュートや電気温水器、オール電化の割引を受けられないご家庭では、従量電灯のみ選択可能です。
(2)エコキュートや電気温水器をご利用で、割引対象機器が4~5kW以上の場合は、時間帯別電灯プランがお得です。なお、それ以下の場合でもお得になる場合があります。
(3)オール電化のご家庭の場合、おおむね300kWh以上をお使いの場合はEeホームフラットが、それ以下の場合は従量電灯がお得です。一般家庭の平均的な使用量程度であれば、Eeホームフラットがお得といえるでしょう。
(4)EeホームホリデーはEeホームフラットがお得の場合で、平日日中に誰もいないご家庭に適したプランです。
なお、電気の時間帯別使用量はご家庭の生活パターンにより大きく異なる場合がありますので、この記事は一つの目安としてお考えになると良いでしょう。
沖縄電力では、Webサイト上で電気料金のシミュレーションが可能です。料金プランをご検討される際には、こちらで計算の上、あなたに適したプランをお選びいただければと思います。