2016年12月、国民生活センターから「ヘアドライヤーの取り扱いに注意-発火、火花の発生によるやけどや、髪の毛が吸い込まれて抜けなくなることも-」という情報と報告書が公表されました。
国民生活センターによると、ヘアドライヤーの相談は毎年100件以上の相談があることをご存じですか?
その中には、私達が日頃行いがちである「やってはいけないこと」の内容が含まれています。
つまり取扱いに注意すれば防げる事故ということです。それはどのようなものなのか、詳しくみていきましょう。
事故事例1:電源コードから火花でやけど!
1.事故事例
国民生活センターの報告書によると、一例として「本体とコードの付け根の部分から火花が散り、やけどをした」というものがあります。これはヘアドライヤー相談のうちの8~9割を占めています。
この現象を国民生活センター自身で再現し、動画で公表しています。「ヘアドライヤーの取り扱いに注意」発表情報の中に動画がありますので、確認してみて下さい。
【動画】国民生活センターでの再現動画
2.原因
2-1.火花が出る原因は電源コードの異常
火花が出る原因は、電源コードの異常です。
電源コードの内部はより線といい、細い金属の導線が複数本使用されています。
例えばこの線を20本使って電源コードが構成されている場合に、半分の10本が内部で折れてしまっていたら、残りの10本で電気を通さなければなりません。
必然的に一つ一つの導線にかかる負荷は高くなり、抵抗が大きくなるため温度が上がり、被覆の焦げや穴が空く原因となります。
また、切れた導線同士、離れている導線同士が接触する際に大きな火花が出ます。いずれも電源コードが正常であれば起きない現象です。
2-2.電源コードに異常が起きる原因は何か??
もちろん製品不良による発火ということもありえるでしょう。
しかしそのような場合、多くは機器使用開始時点で何らかの問題があるはずです。この場合、即座に使用を中止し修理依頼を出すべきことは言うまでもありません。
もう一つの原因で、かつ主な原因とも言えるものは折り曲げやねじれの負荷を与え続けたことによる金属疲労の結果です。
導線も金属ですから折り曲げの結果により折れてしまうもので、残った導線に負荷がかかり火花等の事故につながります。
この中でも最も異常が起きやすいのは電源コードが本体に接続される部分です。
保管の際に電源コードを引っ張って本体に巻き付けたその時、この部分には毎回強い折り曲げの力が働きます。これが日々繰り返されると、中の導線が1本また1本と折れていき、やがては発熱、被覆の焦げ、発火や火花発生に至ります。
3.使用上のポイント
3-1.使い終わった後は・・・
これまでに述べた通り、電源コードを本体にきっちり巻きつけることは電源コードの断線につながるため行ってはいけません。
電源コードをドライヤー本体よりも少し大きい円の形にまとめて、その円の中にドライヤーを置くということは、電源コードを傷めずに保管できる一つの方法と思います。
3-2.コードの異常に注意しましょう
国民生活センターの報告書によると「発煙、発火、火花の発生等を経験した人のうち、約7割の人が、コードにねじれが生じている、一部だけ熱くなる場所や柔らかい場所がある、使用中にヘアドライヤーが止まるなどの異常が生じているのに気が付いても使用を続けている状況が見られました。」とあります。
これまでに述べた通り、この現象は電源コードに異常が生じていることが最も可能性の高い原因です。この他、コードの変色や焦げた臭いがある場合も使用を続けるのは危険です。
「使えているからいいや」は、ケガ等の事故につながります。このような異常がみられた場合はあなたの身を守るためにも、直ちに使用を中止しましょう。
事故事例2:髪の毛が吸い込まれる
1.事故事例
国民生活センターの報告書によると、一例として「吸い込み口に髪が吸い込まれ、外せなくなった」というものがあります。この結果として、ドライヤーが動かなくなったという事例もあります。
この現象も国民生活センター自身で再現し、動画で公表しています。「ヘアドライヤーの取り扱いに注意」発表情報の中に動画がありますので、ご確認下さい。
【動画】国民生活センターでの再現動画
2.原因
標準型のドライヤーは筒の形をしており、温風吹き出し口の背面に空気の吸い込み口があります。この吸い込む力は、吹き出し口から出る風の強さと同じであり、従って強い吸い込みの力が働いています。ここに髪を近づけると、容易に吸い込まれてしまいます。
3.使用上のポイント
3-1.ドライヤーを扱う際には、機器の背面にも気を配りましょう!
髪が長い方の場合は、乾かす側と反対側の髪の毛がドライヤー吸い込み口に接近することがありがちなものです。
これは髪の短い方には想像しづらいかもしれません。それは、髪の短い方は髪の外側のみドライヤーを当てることに対し、肩の下まで髪が伸びている方は髪の内側からもドライヤーを当てているためです。
(一社)日本電機工業会では、吸い込み口から髪を10cm以上離すことを呼びかけています。特に内側からドライヤーを当てる場合は、ご自身の髪の毛が吸い込まれないかどうか、絶えず注意を払いましょう。
3-2.もしも髪の毛を吸い込まれたら
髪の毛を吸い込まれたら、直ちに使用を止めましょう。
ドライヤー内部のファンやモーターに巻き付いた状態であり、そのまま使用を続けると危険です。
巻き付いた髪を切るのは惜しいこともあるでしょうが、むりやり引っ張るとケガの原因になりますので、切ってしまわざるを得ません。
その他、事故につながりうる使い方
1.ドライヤー吹き出し口に毛髪を近づけすぎる
ドライヤー吹き出し口付近にはヒーターがあります。何らかの理由により内部に毛髪が混入した場合、ヒーターで加熱され異臭、発熱、発火の原因となりえます。
2.ドライヤーにほこりがたまったまま
ほこりは火災の一つの原因です。ほこりがヒーターに接触した場合は発熱や発火の原因となります。またほこりが多いと、ファンやモーターの故障原因となるでしょう。
3.ドライヤー使用中や使用直後、吹き出し口に手を触れる
ドライヤー使用中や使用直後、吹き出し口は高温となっています。製品によっては70℃以上の温度となっています。やけどをする可能性がありますので手を触れないようにしましょう。
まとめ
ここまでに説明した内容は、どれも取扱説明書に書かれている内容です。
ヘアドライヤーは身近で使いやすい機器であることから約6割の方が取扱説明書を読んでいないということですが、これを機会にぜひ一読してみてください。
今まで気づかなかった注意点に気づくこともでき、より安全に、より長い期間使うことができるでしょう。
【参考】国民生活センター