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皆様は、ごみから発電できるということをご存知ですか?
現在、可燃ごみは各自治体の費用で焼却処分しているところが大半です。
また多くの自治体では、ごみ処理費用の一部を住民に負担してもらっています。指定袋制度はその代表例です。
このように費用をかけて処分している可燃ごみですが、発電の原料ともなれば発電量に応じた費用が回収できるとともに、燃やすことによって発生する熱を有効活用することにもつながります。
つまり、エネルギーの有効活用になる訳です。
どのような仕組みなのでしょうか。またどのようなメリットや問題点があるのでしょうか。詳しくみていきましょう。
廃棄物発電とは?
廃棄物発電は、ごみを燃やすことで発電する方法です。バイオマス発電の一類型として扱われており、再生可能エネルギーの一つでもあります。
ごみの焼却場は各自治体、あるいは複数の自治体で運営されていますから、電力会社の発電所よりもより住民に近い場所で発電を行うという特徴もあります。
ゴミを電気に変える方法は?
発電方法は、ごみを燃やした熱を利用して蒸気をつくり、タービンを回して発電します。
実は火力発電と原理は同じです。燃料が石油や天然ガスなどの化石燃料から、ごみに変わっただけです。
とはいえ、発電効率は火力発電ほど高くはありません。
火力発電の発電効率が50%に迫る状況である一方、廃棄物発電は12%程度です。
新設の廃棄物発電施設の発電効率は向上していますが、それでも20%を超えれば優秀とされています。
ごみの持つエネルギーのうち、その一部しか電気エネルギーに変換できていない訳です。しかし言い換えれば、捨てるだけのごみのうちその一部でも電気エネルギーに変換できる画期的な施設ともいえます。
廃棄物発電のメリット
なんといっても捨てるだけのごみから電気を取り出せることが最大のメリットです。
ただ燃やすだけならば熱やCO2を放出するだけですが、電気エネルギーに変換することによりその分の発電を行わずにすみます。
そのしくみは火力発電と似ていますので、石油や天然ガス等の化石燃料を節約することにつながりますので、環境に配慮した発電方法といえます。
また、原料は国内で調達できますので、化石燃料のように国際的なリスクにも影響されずにすみます。
廃棄物発電の2つの問題点
大きなメリットがある廃棄物発電。しかしまだまだ改善しないといけない点があることも事実です。
1.多くのごみ焼却施設が廃棄物発電にとっては小規模
廃棄物発電のデメリットは、現在主流のごみ焼却施設の規模で廃棄物発電を行うには規模が小さいことがあげられます。
毎日301トン以上の焼却処理を行っている施設では85%以上の施設で廃棄物発電を行っています。
しかしごみ焼却施設の規模で最も多数派(全体の3分の1)を占める一日当たり101トン~300トンの中規模施設では、3分の1程度の施設でしか廃棄物発電を行っていません。
このため、国はごみ焼却施設の大規模化を推進しています。
またこのような中規模施設では発電した電力のほとんどを焼却施設で消費しており、また出力も安定していません。
そのため、電力会社から買い取りを拒否されることもあります。
2.原料となるごみの問題
もう一つのデメリットは、原料となるごみの供給です。
現在ごみの減量化が積極的に進められていますが、これは発電量を上げるためにはより多くのごみが必要ということと矛盾します。
このため、プラスチック類も燃えるごみとして回収し、熱量を上げて発電量のアップを図る動きが各地でみられます。
しかしプラスチックはダイオキシンや、焼却炉やボイラーを腐食させる塩化水素の発生源ともなるため、利用にあたっては適切な対策を取らないと有害物質を空気中に放出する原因となります。
さらなる発電効率の向上 ~ガス化溶融炉の利用で効率的に〜
ガス化溶融炉と聞くと難しく聞こえますが、簡単に言えば効率の良い可燃ごみ処理施設のことです。
大きな違いは常に外部から熱を加える代わりに一定量のごみを加えることで、1200℃の高温を保ち続ける点です。
これによりごみ処理で問題となるダイオキシンや窒素酸化物の抑制にも優れています。
またこの高温ではごみ自体が溶けだし灰分の塊となったスラグとなるので、灰を処分場に埋め立てる代わりに道路の路盤材等にリサイクルできます。
また鉄やアルミ等の金属類も取り出し、リサイクルできます。
もう一つのメリットは、1200℃の高温で蒸気を熱することにより、その蒸気もより高温にできることです。
これにより新規の発電施設でも16%程度といわれる発電効率の向上が期待できます。同じ量のごみから、より多くの電気を取り出せるという訳です。
ごみ処理費用低減への試み~焼却からRDF原料への転換例~
廃棄物発電の方式の一つに、ごみを直接処理しながら発電するのではなく、一旦クレヨン状の固形燃料にする方法があります。
この燃料をゴミ固形化燃料(RDF)といいます。
2000年前後には注目されていた方法ですが、2003年に三重県でのRDF貯蔵施設で火災・爆発が起きて以降、しばらく注目されていませんでした。
RDFは化石燃料と異なり発酵による発熱で温度が上昇するため、保管しているだけでも自然発火する恐れがあり管理に注意が必要です。
地方自治体でもRDF製造に取り組みだしています。
北海道倶知安町及び周辺7町村では、RDF製造に取り組んでいます。
貯蔵に注意が必要なRDFですが、その一方でコストが安く、倶知安町の資産では維持管理費や補修費等を加えてもごみ焼却と比べて6割のコストで済むとされています。
財政に厳しさが増す地方自治体では財源の有効活用が喫緊の課題であり、ごみ処理費の節約で得たお金を他の行政サービスに回せることは大変大きなメリットです。
また環境省によるとRDFの発電効率は28%と、高い発電効率が見込めます。
RDF製造には、塩分が多いと塩化水素の発生原因となり、炉を傷める原因となります。
このためごみ収集にあたっては、可燃ごみと別に生ごみという区分を作り、収集を行う必要があります。
私達ができること~もうごみの減量に努めなくても良いの?~
廃棄物発電は、ごみの持つエネルギーの一部を電気として回収する方法です。
再生可能エネルギーとなりますので、環境に優しいエネルギーでもあります。
それでは、私達はごみの分別や減量への努力から解放されるのでしょうか。
決してそうではありません!!
なぜなら廃棄物発電の発電効率は現状で12%、スーパーごみ発電でも35%以上は難しいとされています。
どんなに努力しても、約3分の2以上のエネルギーは捨てられてしまいます。
従って、ごみの発生そのものを減らす努力は引き続き必要です。
廃棄物発電は「もう捨てるしかないごみ」についてはエネルギー回収の有効な手段の一つです。
サーマル・リサイクルになり、化石燃料を節約する手段となりえます。
しかし、だからといってどんどんごみを増やしてしまうと、廃棄物発電を行ったとしても結果として環境に負荷を与える結果となってしまいます。
私達は引き続きごみの減量に努力しつつ、同時にお住まいの自治体がごみからのサーマル・リサイクルを進めているか?
廃棄物発電に取り組んでいるか?ということについても関心を持つことが必要です。
まとめ ~ごみは単なる廃棄物から資源の1つへ~
「捨てればごみ、活かせば資源」という言葉がありますが、廃棄物発電により、ごみもその活かし方で資源になる時代がやって来ました。
もっともごみの持つエネルギーのうちの一部しか取り出せませんが、単に燃やせば全てが熱として捨てられてしまいますから、廃棄物発電はサーマル・リサイクル、つまり環境に配慮した発電方法といえるでしょう。
より環境負荷を下げる取組も進んでいます。ガス化溶融炉はダイオキシン発生を防ぐことと灰の量を低減する目的で導入されるものですが、同時に発電効率の向上にも寄与しています。
また、可燃ごみを自治体のごみ処理施設で焼却する代わりにRDFに加工することで、ごみ処理コストの減少に取り組む自治体もあります。
これも発電効率の向上につながるものです。
このように廃棄物発電はごみを資源として活用する点で、環境に配慮した発電方法です。だからといってごみの分別や減量に取り組まなくても良い訳ではありません。
ごみの減量と廃棄物発電の両方を活用することで化石燃料を節約し、環境に配慮した社会の実現につなげることができます。
参考
新電力ネット 用語集「廃棄物発電」
廃棄物発電の現状と課題
一般財団法人日本環境衛生センター「今後のごみ発電のあり方について」
神鋼環境ソリューション「流動床式ガス化溶融技術最前線 多種多様なごみの混合処理と最終処分場の延命化」
三菱重工環境・科学エンジニアリング株式会社「ガス化炉および溶融炉」
日本経済新聞「家庭ゴミを発電燃料に 爆発事故12年目の再挑戦」※倶知安町の例
失敗知識データベース「ゴミ固形化燃料(RDF)貯蔵槽の火災・爆発」