NITE=製品評価技術基盤機構によると、電源コードやプラグに関連する事故は、平成 21 年度~平成 25 年度 の
電気機器を使用する際に欠かせないものが、電源コードです。コンセントに差しっぱなしの方も多いのではないでしょうか。また、電源コードを抜いた後、きれいに束ねている方もいることでしょう。
取扱説明書には電源コードの注意点についても記載されていますが、つい見落とされがちです。しかし、注意点の中には火災や感電、けが防止のために重要な内容が多く含まれています。
とはいえ、読むのが面倒な方も多いでしょう。
この記事では取扱説明書とは少し違った視点から電源コードの取扱い方を考えるべく、まず電気コードの構造をみていきます。
その上で「なぜ、このことが禁止、あるいは注意点としてあげられているのか」ということを考えてみましょう。
電源コードの構造は?
1.電気の「行き用」と「帰り用」2本のより線が入っている
一般的な電気機器に使われる交流100Vの電源コードを切ってみると、外側をぐるっと包んでいる被覆の中に、2本の被覆に包まれた線があります。この一方がプラグの片方の刃に、もう一方がプラグのもう一方の刃につながっています。
この2本の線は、それぞれ電気の行き用と帰り用に対応しています。コンセントからプラグを介し流れてきた電気は、一方の線を通って電気機器に入った後、もう一方の線を通ってプラグ及びコンセント介し屋内配線に戻るという流れとなっています。
この2本のそれぞれの線にも被覆があります。
この中には、いくつもの細い銅線をねじって一つの線のようにまとめた「より線」が入っています。
このため、被覆のある状態では1本の太い線のように扱うことができ、柔らかくなっています。
また被覆があるため、電源コード内部で行き用の配線と帰り用の配線が接触せず、ショートしないようになっています。
2.折り曲げを繰り返すと折れてしまうことがある
より線は、銅線でできています。金属には折り曲げを繰り返すとそこから折れてしまうという性質があり、より線も例外ではありません。
鉄でできている針金でも、折り曲げを繰り返すと最後には折れてしまいますが、それと同様です。
保管の際に円い形で束ねる分には問題ありませんが、折り曲げたりきつく曲げたりすることを繰り返すと、曲げたところでより線を構成する細い線が折れてしまうことがあります。
折れた電線同士が接触すると火花を発し、被覆のビニールを焼く等火災の原因となります。
3.より線の一部が折れると、他の線に負担がかかる
銅でできている電線に電気を流すと、多少なりとも熱が発生します。
そして電気を流す量が増えると、発生する熱も多くなります。
より線の場合は、それぞれの細い線が分担して電気を流しています。そのうちの一部が折れてしまうと、その線は電気を流せなくなりますから他の線がカバーしなければなりません。
その結果、電線1本当たりに流れる電気の量は多くなり、また熱を持つこととなります。
またこの状況が進むと、熱によりビニールの被覆が焼けたり電線が溶けたりする危険もあります。
電源コードの正しい取扱い方と注意点、6つのポイント
電気機器の取扱い説明書を見ると、電源コードについて多くの注意点が書かれています。
一つ一つ覚えるのは大変ですが、電源コードの構造を頭に置くと理解しやすくなることも多いでしょう。
1.乾いた手で扱う。濡れた場所に置かない
濡れた手で電源コードの抜き差しをすると、感電の原因となります。乾いた手で扱いましょう。
また一般的な家電製品の電源コードは濡れた場所に対応していません。これも感電の原因となりますので、乾いた場所に置きましょう。
2.プラグや電源コードを設置している箇所はきれいにしましょう
美観のためということももちろんですが、大きな目的は火災防止です。以下、説明していきます。
2-1.プラグの清掃
プラグにほこりがたまっていると、ほこりに含まれる水分が電気を通し、あるタイミングでほこりを通じてプラグの刃同士がショートし、大きな電流が流れるようになります(トラッキング現象)。
この時の発熱により火災につながりますので、プラグのほこりは必ず取り除きましょう。
冷蔵庫等24時間使う家電の場合でも、定期的なプラグの清掃が必要です。
また電気機器本体へのコネクタ部分が磁石になっているプラグ(マグネットプラグ)の場合、金属を引き寄せます。
クリップ等の金属片がついたまま本体に接続するとショートの原因となります。
接続時には金属やごみが付いていないか、都度確認しましょう。
2-2.電源コード敷設箇所の清掃
電源コード敷設箇所がほこりだらけという状況は、よくみられます。
これだけでは直ちに問題となりませんが、何らかの理由で電源コードの温度が大きく上昇した場合、火災につながる可能性があります。美観維持も含めて、掃除を心掛けましょう。
3.コンセントへの差込
3-1.差込は奥まで確実に
コンセントにしっかり差し込んでいないことがあります。もちろん電気は通じますが、プラグの刃の一部分に負荷がかかっている状態であり、発熱の原因となります。
また刃の間にほこりが溜まる原因ともなりますので、コンセントへの差込は奥までしっかり行いましょう。
3-2.抜き差しはプラグを持って行い、コードを引っ張らない
コンセントへの抜き差しは必ずプラグを持って行って下さい。
電源コードを引っ張って抜くことは中の電線が切れる原因となるのでしてはいけません。
4.柔らかいからといって折らず、無理なく曲がる程度で使いましょう
電源コードは柔らかく、簡単に折ったり曲げたりできますが、折り曲げることは中の電線を傷める原因となるので避けましょう。特に折り曲げを繰り返すと、電線の破断の原因となり、また電源コードの発熱の原因となります。
なお、円い形にきれいにまとめて保管すると電源コードに無理な力がかかりません。
5.電源コードの上に物を乗せたり固定したりしない
電源コードの上に物を乗せると、中の銅線や被覆をつぶしてしまい、ショートにより大きな電流が流れたり発熱や火災の原因となります。
また、ステープル等で固定することも中の電線や被覆を破損する可能性があります。
人が電源コードの上に乗ることも破損の原因となりますから、踏まないように気を付けましょう。
6.よく見かける「束ねた電源コード」について
購入時に束ねた状態で販売されていることも多いものです。
しかし、使用の都度電源コードを束ねることは折り曲げた部分に繰り返し力をかけることであり、中の電線が切れる原因となるので避けましょう。
また束ねたままコンセントに差して使うことは、束ねた部分に熱がたまりやすいので行ってはいけません。
束ねた部分をほどいてから使って下さい。
使用を中止すべき5つの場合
1.電源コードから火花が出た場合
被覆・銅線ともに傷つき、切れている銅線が露出している場合で電気を流したとき、銅線同士が接触すると火花が飛びます。
それ自体が火災やけがの原因となり、大変危険です。使用はやめて下さい。
2.動かすと電気が入ったり切れたりする場合
より線を構成する銅線が破断している場合です。特に動かす角度によって大電流が流れることがあり危険です。使用しないで下さい。
3.変色、手で持てないほど熱くなった場合
電源コードが変色しているということは、その部分の被覆が破壊されているということです。
また電源コードに負荷がかかっているということでもあり、特に手で持てないほど熱くなっている場合や焦げ臭いにおいがする場合は火災に至ることがあります。
被覆が燃えることもあれば、被覆が溶けることによってショートすることもありますので、いずれにしてもその電源コードは使用しないで下さい。
4.電源コードの被覆の破損
中の被覆が破損し銅線が見えている場合、通電中にその場所に触ると感電のおそれがあり危険です。
このような電源コードは使用しないで下さい。
5.電源プラグの変形やがたつき
コンセントにつないだ場合、電源プラグの刃の一部分しかコンセント内部の金属と接触しないため接触不良を起こし、発熱の原因となります。このような場合も使用しないで下さい。
まとめ
取扱説明書に細かく書かれている電源コードの注意点も、その仕組みを押さえれば理解が進むと思います。
改めて押さえるべき点は、以下の6点です。
いずれも事故防止のために大切なことです。
(1)コンセントにしっかり差す。使い終わったら抜く
(2)折ったりつぶしたり、引っ張ったりしない
(3)束ねず覆わず、熱を発散させる
(4)きれいに清掃(マグネットプラグは金属片の付着にも注意)
(5)濡れた手で扱わない
(6)異常のある物は使わない
電源コードは柔らかくできていますので、ともすれば金属でできていること、電流が流れていることを忘れがちです。
取り扱い方を間違えると、火災やけが、衣類や家具を焦がす等の事故を引き起こす原因となります。
その一方、正しく取り扱えば問題なく便利に使えるものでもあります。
とかく雑に扱いがちな電源コードですが、中の銅線は繊細なものです。傷つき折れてしまわぬよう優しく扱い、電気機器を長く使えるように心がけましょう。