ヨーロッパでの電力自由化
ヨーロッパでは世界に先駆けて電力自由化政策が進められてきました。
中でも、イギリスや北欧では90年代の初頭から自由化が始まっているのです。
EU全体としては1996年の第1次電力EU電力指令が自由化への第一歩となりました。
その後、徐々に内容が具体化されていき、最終的には、
・電力解放による自由な競争原理で機能する市場の確立
・小売市場における電力料金の引き下げとサービス向上
・新規参入による投資促進
・国家間の協力強化
・将来のエネルギーの安定供給保障
を目指すと発表しています。
市場の発展状況
もうすでに電力自由化が始まってから20年以上が経過する国もあるヨーロッパでは、市場の発展の仕方は様々なようです。大きく分けると3種類に分類できます。
市場二分型
従来の電力供給会社と新規参入の電力供給会社がシェアを2分する形。
メリット:競争が活発になり消費者の選択肢が多様化します。
デメリット:新規参入者の安定しない供給体制などが問題視されることもあります。
たとえば、ドイツでは脱原発を目指すクリーンエネルギー特化の新規参入企業優遇の政策などもあり、従来の電力供給会社と新規参入者でシェアが二分しています。
従来電力強力型
電力自由化が始まった後も、元々の電力供給会社が圧倒的なシェアを持つ形。
メリット:従来通りの安定供給が期待できます。
デメリット:市場競争が働かず価格の低下やサービス向上が見込めないという問題があります。
たとえば、フランスでは自由化が始まって数年経った後も半分以上の人が自由化の仕組みを知らないという調査結果もあり、消費者が電力の購入先についての知識不足が指摘されています。
外資参入型
クロスボーダーでの電力供給体制の構築を目指すEUで、国内の供給会社に代わって他国の大手企業が参入し、大半のシェアを獲得する形。
メリット:安定供給やサービスの向上は見込むことができます。
デメリット:国内企業のノウハウや雇用体系が失われてしまう可能性があります。
たとえば、スペインでは国内企業がそれぞれ海外大手5社の傘下に入りました。この4社だけでシェアの9割以上を占めるようになり、電気料金は上昇する結果となりました。
次は、ヨーロッパにおける電力自由化を支えたシステムにも着目してみましょう。
国境を越えた電力融通
地理的特性を活かした連携
地理的に陸続きで、同じ経済共同体をもつヨーロッパでは各国が国境を越えて電力の融通ができるシステムが確立しています。日本では電力自由化に関して1割ほどの消費者しか内容を把握していないというアンケート結果があります。
原発の使用割合やクリーンエネルギーへの注力具合は違いますが、電力・ガス網が張り巡らされていて日常的に電力のやり取りが行われています。
10%を輸入でまかなう
主要国においても国内需要の10%ほどの輸出入を行っている国が多いようです。
電力に関する各国の方針が違うために、天候や季節に左右されやすい発電方法を採用していても他国からの融通を受けることで大規模な停電を免れることができています。
日本を含むアジア圏でも電力相互補助的なシステム構築を目指す動きが出ていますが、まだ現実性を持った計画は発表されていません。
このままでは、「従来電力強力型」への道をたどってしまい電力自由化のメリットをあまり享受できない可能性があります。
今は幸いにも新規参入に関して500社以上が興味を示しています。
消費者自身が意思をもった判断をしてこれまでの型にはまらないような理想的な市場環境を作り上げるチャンスなのです。
参照URL
https://www.umds.ac.jp/faculty/ryukabooks/ronsyu/documents/025-049obata.pdf
http://criepi.denken.or.jp/jp/serc/denki/world_book/008.pdf
http://www.jbic.go.jp/wp-content/uploads/reference_ja/2012/06/2839/jbic_RRJ_2012028.pdf
http://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2011html/1-2-2.html