太陽光発電の非効率性
2010年以降には太陽光発電導入量が際立って加速し、ドイツの再生可能エネルギー電力投資はバランスを欠くようになってきました。
その発端は、2008年のいわゆるスペインの太陽光発電バブルの崩壊にあります。
スペインの太陽光バブル
スペインは、FIT制度による太陽光発電の買取り条件を2007年に改定し、買取単価を50円以上に引き上げるとともに、25年間もの買取り期間を保証し、それ以降も8割の買取単価を保証すると言う破格の条件へと変更しました。
その結果、スペインに世界中から再生可能エネルギーへの投資が集まり、スペイン政府の想定を大幅に超えた導入量となってしまいました。
そこで、2008年9月以降、買取価格を下げる通達を行ったところ、逆に駆け込み需要を呼び込んでしまい、2008年単年の導入量が260万kWに膨らみ、翌年は導入量がほぼゼロになると言う事態に陥りました。
こうして世界の注目を集めたスペインの太陽光発電市場は短期間で崩壊したのです。
欧州債務危機の顕在化
さらに、この頃になると欧州債務危機が顕在化し、欧州各国の太陽光発電プロジェクトへの政府補助が減少し、多くのメガソーラープロジェクトが頓挫する一方、バブルの間に太陽電池メーカーの生産投資が積み上がり、太陽光発電システムは供給過剰となってしまいました。
その結果、システム価格が大きく下落し、発電事業の投資採算性はその分だけ高まる、と言う状況を生み出したのです。
ドイツのFIT制度では、太陽光発電の買取価格が毎年減額されることになっていますが、システム価格の急速な下落はそれを補ってなお投資対象としての魅力を高めることとなりました。
2011年末には、太陽光発電の累積導入量が25GWにもなり、需要家が支払う賦課金の高騰が問題となりました。
需要家の負担増加
賦課金が製造部門に薄く、家庭部門に厚く負担させる構造となっていることもあり、最近では1家庭当たりの平均的な賦課金は毎月1,069円にまで膨らんでいます。
家庭の負担が増えたのは、買取単価の低下以上に太陽光発電の導入量が増えたことが大きな要因となります。
しかし、太陽光発電は負担の重さほど再生可能エネルギーの導入に貢献していません。
FIT制度の賦課金の約40%は太陽光発電のコストに起因する一方で、太陽光発電のkWhベースの発電量は再生可能エネルギー発電の約15%に過ぎないのです。
それと比較して、風力発電は賦課金に占める割合が25%なのに対して発電量の割合は45%に達している。
FIT制度では、少ない負担でいかに再生可能エネルギーの割合を増やすか、と言った経済的な視点が重要になってくるのです。
ドイツは世界的に見ても風力発電やバイオマスの導入量が多くなっています。
そのドイツでさえ賦課金に占める太陽光発電のコストの高さが問題とされているのだから、再生可能エネルギー発電の導入が遅れた日本が太陽光発電に傾倒した場合、さらに1家庭当たりの負担は重くのしかかってくる事が容易に想像されます。