■交流回路では、電流がずれる?
電気の基本法則として知られているジュールの法則では、負荷で消費される電力P(単位W:ワット)は、負荷にかかる電圧V(単位V:ボルト)に、負荷に流れる電流I(単位A:アンペア)を掛けて求まる、と定義されています。
しかし、実際にそれを実験で確認するために、測定回路をつくって加える電圧と電流、そして消費される電力を測ってみると、計算どおりの値にはならないことがわかります。
直流回路では、負荷としては抵抗(電気を流しにくくする成分)しかありませんが、交流回路になると、負荷には抵抗のほか、コイルやコンデンサが交流の抵抗成分にれをインピーダンスという)として働きます。コイルは導体をループ状に巻いたもので、流れる交流電流の周波数が高くなるほど電流が流れにくくなる性質をもつ素子です(直流では導体として働きます)。
また、コンデンサは導体を絶縁体を挟んで向かい合わせて置いたもので、電気を蓄える性質があり、流れる交流電流の周波数が低くなるほど電流が流れにくくなります(直流では充電および絶縁素子として働きます)。
そして交流回路では、抵抗では加わる電圧が変化するとそれに合わせて電流も変化して、電圧と電流の変化にずれはありませんが、コイルとコンデンサでは、電圧が変化すると、電流は少しずれて変化するのです。
このずれが、交流で消費電力が(電圧×電流の)計算どおりにならない原因になります。
■力率の有無
交流回路に供給された電圧(電圧計の指示値)と電流(電流計の指示値)を掛けて求まる見かけ上の電力を皮相電力S(単位VA:ボルトアンペア)と呼び、負荷で実際に消費された電力を有効電力P(単位W)と呼びます。そして皮相電力の内、何パーセントが有効電力として使われているかを表す数値が力率COS 6です。
力率が100%なら、供給された電力は100%すべてが負荷で消費されていることになりますが、力率が悪い回路や機器では、同じパワーを出すのに大きな電流が必要になり、エネルギー効率が悪いことになります。
なお、有効電力は抵抗負荷で消費された電力ともいえ、皮相電力は有効電力と無効電力Q (単位var : バール)を含むものなのです。交流回路で無効電力が発生する理由は、コイルやコンデンサが電力を消費しない性質をもっているためです。