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ここでは、ビルの管理担当者が取り組むべき節電方法について考えていきます。オフィスビルの設備や運用など大きな電力を使用する部分ですので、効果的に削減を図りたいものです。
少々専門的な話も多く、また長くなりますが、分かる部分から積極的に見直しをしてみてください。
エレベーターは最低限の稼働数に
オフィスビル内において、エレベーターが使用している電力量は相当に大きなものです。
汎用機では7~13kW、貨物用のものであればさらに電力消費量は大きくなります。稼働台数が多ければ多いほど、それだけの電力負荷が増加していくことになりますので、電力使用ピーク時間帯での稼働台数抑制は、かなり効果的な節電対策と言えましょう。
すでに、「2アップ、3ダウン運動」などと言う階段を利用する省エネ方法を就労者に推奨しているビルもあり、少しずつですが普及してきているようです。
やむを得ない場合を除き、エレベーターの稼働台数は抑えるのがおすすめです。政府も推進している「稼働台数半減」を目指して、運行台数の調整を行いましょう。
換気設備は優先順位を明確に
オフィス内では大小さまざまな換気用ファンが稼働しています。
駐車場、機械室、水槽室、各会の給湯室やトイレなど、いくらでも使用場所を上げることはできるでしょう。
まず、ビル全体のどの場所で換気用ファンが使われているかをきちんと確認しましょう。
そして可能であれば、電力ピークの時間帯での稼働を原則停止し、どうしても使わなければならないもののみを優先して稼働させるようにしましょう。
この場合も、連続運転ではなく「止める」を基本の状態と考え、間引き運転を心がけるようにしましょう。
衛生設備は効率を考えた運用を
揚水ポンプや汚水ポンプを常時稼働にせず、電力ピーク時を避けて活用することで衛生面を損なうことなく節電をすることが出来ます。
事前準備を行ったうえで、取り組んでみてください。
厨房では「熱」と「におい」の対策を
厨房は、電力も含めビルでのエネルギー消費の最も多いところです。
仕込みや調理などの段取りについて、調理人との連携をうまくはかりながら、電力使用ピーク時である15時前後の業務量を減らすなどなるべく負荷を下げるようにしましょう。
また、火気を使わなければ換気の量を抑えることも可能になります。
食品を扱う以上どうしても避けられない「におい」からの換気は、厨房の臭いの大元である「グリーストラップ」(業務用厨房から排出される汚水から、生ごみや油分を取り除く装置)の清掃をこまめに行うことで抑制することが出来ます。
大量の食器を使う関係上、大型の食器洗い乾燥機を設置している厨房も多いと思われます。
大きさによって異なりますが、家庭用のものでも1回500Wh程度は電力消費しています。
これも使用時間を短くしたり、稼働する時間帯を変えることでかなりの効果が期待できるでしょう。
そして、厨房に欠かせない冷蔵庫と冷凍庫ですが、これはとにかく温度管理を徹底することが節電への第一歩です。
保管する品物を再度チェックし、冷やしすぎないよう適温での管理を心がけましょう。
また、霜取りなど、こまめに冷凍庫内の掃除を行い、冷凍効率を上げることも節電へつながります。
冷水の温度は10度以上をキープ
電動式の冷水機の標準設定温度は7度ですが、これを10度にすることで約10%の節電となります。
冷えにくさが気になるようであれば、1度ずつ段階を上げるようにして、最終的に10度のラインをキープできるようにしていきましょう。
冷やすことにかかる電力だけではなく、冷水の温度が上がることで除湿が抑制されるため、冷蔵設備にかかる負荷も減ります。
冷房のピーク月以外では、この「冷却温度設定を10度に緩和して省エネ」と言うことについてすでに取り組んでいるオフィスも多くみられているようです。
これを夏場も徹底することでさらなる節電へとつなげていきましょう。
電動式とガス式のバランスをはかる
昨今では電動式エアコンや冷凍機の性能が著しく向上したため、「エアコンは電動がメイン」と言う考え方が一般的となっています。地下の機械室を例に挙げても、電動式の冷水チラーやターボ冷凍機が都市ガスなどを使用する冷凍機(冷温水器や吸収式冷凍機)よりも高性能であると言う認識から、電動式を優先して使用し、ガス式はその補完的なものとして余力を残して運用すると言うのが主流になっています。
そのため、このガス式の保有している余力をフル稼働させるだけで確実な節電効果が期待できることになります。メインとサブの機械を入れ替え、いままで電動式が担っていた役割をできる部分に関してはなるべくガス式に移行させましょう。
過剰な換気は本当に必要か
オフィス内の空気の入れ替えは、もちろんそこで働く人たちの健康を守るために必要なのですが、過剰な空気の取入れは電力の無駄使いと言えます。
オフィス内でのCO”濃度の基準値は、1,000ppmです。(満員電車の車内でこの5倍程度だと言われています。)この基準値をキープするのを目安に、適切な換気を行いましょう。
換気用の外気量を調整するためには、インバーターを送風機に取り付けることで細かく調整を行うことが出来ます。ビル内空調の運転管理の見直しをしていきましょう。
冷房は間欠運転を基本に
「間欠運転」とは、オフィス各階の冷房を輪番で短時間(30分程度)停止すると言う取り組みです。すでに商業ビルで実施された例があり、契約電力超過を回避するため、電力使用量オーバーが予想される時間帯で各階ごとに短時間の冷房停止を実施したところ、室温の上昇はわずか1度で、お客様からのクレームも発生しなかったとのことです。
このように冷房の間欠運転による節電は抜群の効果があるのです。
また、エアコンの室外機についている圧縮機(空気を冷やすフロンガスを圧縮するための機械。コンプレッサー。)を15分程度たびたび停止させる便利な制御装置も普及しつつあります。
エアコンはファンを回転させることと、この圧縮機を稼働させる事で電力を多く使用しますが、その大部分を占める圧縮機を抑制することが出来ればさらなる節電効果が期待できます。
冷房システム台数制御の見直し
冷房システムは2系列に分割されているオフィスも多いですが、電力ピーク時には単独系列のみを運転するように心がけましょう。
2系列目の冷房設備は、必要な冷房の不可に応じて自動的にオン・オフをしますが、当然ながら2系列目が稼働すれば使用電力も倍増します。
電動機インバーターの制御調整
電動機インバーターとは、電動機が消費する交流電力の周波数(東京では50サイクル)を変更して、電動機の回転数を変化する機械です。
省エネにも効果的で、家庭用エアコンなどに多く搭載されています。
電動機の動力は、回転数の3乗に比例するため、この回転数が減れば確実な節電効果が期待できます。
各オフィスの空調設備などに設置されたこれらを、きめ細かく調整していきましょう。
蓄熱・蓄電設備の管理見直し
インバーターと同じく、エアコンなどに搭載されている蓄熱設備は、昼間の電力ピークの軽減をはかるのに一役買っています。
それと同じく、ビルそのものの蓄熱槽を最大限に活用すれば、さらなる電量デマンドの抑制が期待できます。
蓄熱量を増やすには、まず「蓄熱槽の水量を確認して、不足しているようなら満杯にする」事が肝心です。
この水量のチェックは、意外と見過ごされていることが多いため、これを行うだけでも確実な節電となります。
そして、「貯める水の温度を標準の7度より低い温度に設定」しましょう。
これで昼間の電動冷凍機の運転が抑制されますので、結果として節電につながります。
専門的な話も多くなりましたが、以上のような節電方法が考えられます。細かく、また見落としがちな部分であるからこそ、きちんとチェックをすることで節電を心がけていきたいですね。