鉄塔と電柱その2
架空地線って何?
『避雷針と同じような働きをする架空地線』
送電線を支える鉄塔には何本もの電線が張られていますが、その中に電流の流れていない電線が1本あります。
この電線は鉄塔の上部に張られていて、架空地線と呼ばれています。
電流の流れていない電線を張ったって何の役にも立たないではないかと思うかもしれませんが、
架空地線の役目は雷が発生したときこの架空地線で受けて、電流の流れている送電線路を雷の直撃から守る事なのです。
また、グランドワイヤとも呼ばれて、落雷時に電線などに発生するコロナ現象などを抑える働きもします。
送電線に雷が落ちると広い範囲で停電事故が起こることになり、支障が生じるので、これを防ぐ架空地線は重要な存在です。
光ファイバー
架空地線は、アルミ合金線でできていますが、とても大切なガラスの線を架空地線の中に抱えています。
ガラスの線というのは、光ファイバー線といって通信の機能をもっているもので、日本では電力会社がこぞって採用しました。
光ファイバーと呼ばれる細い線は、光がいつもガラスの中を進んでいく構造になっています。
電話などの通信では、人のしゃべる言葉(音の信号)を電気の信号に変えて、電線を使って相手まで送り、相手の受話器で電気の信号を音の信号に変えて会話をしていました。
この方法は今も使われていますが、この方法では限られた数の信号しか送ることができません。
ところが、電線の代わりに光ファイバーを使って電気信号を光に変えて送ってやると、1本の光ファイバー線で電気信号の数千倍以上の信号が送れるのです。
これは光の周波数が電気の周波数よりも、はるかに大きいからです。
このような通信を光ファイバー通信といいます。
架空地線と抱き合わせに光ファイバー線を重ねるのは、高い電圧の送電線のそばに置いても光は電気の影響を受けないからです。
送電線のたるみは何のため?
『引っ張りすぎても、たるませすぎても駄目』
送電線を見て「あんなに重くて長い電線がよく長い年月、地震や風雨に耐えて切れることなく安全に張られているな」と思いませんか。
具体的な数値を示しますと、50万ボルト用の送電線に使われている電線の重さは、1メートル当たり約2.7キログラムの重さがあります。
それをさらにコロナ損失を防ぐために何本かを一束にしてあります。
鉄塔と鉄塔の距離はおよそ300~350メートルあるので、電線1本の重量は約800~900キログラムにもなります。
ですから、鉄塔が支える力の大きさは何トンにもなってしまいます。このような状態で送電線の鉄塔はどのように耐えているのでしょうか。
送電線を見ると、電線が必ずたるんでいることに気がつくでしょう。
じつはこれがたいへん役に立っているのです。つまり送電線をたるませずに張ると、ただでさえ重いのに加えて、
非常に大きな力が電線や鉄塔にかかってしまい、鉄塔が倒れるか、電線が切れるかという事態になってしまいます。
それならば鉄塔の距離を狭くすればいいではないかと思うかもしれませんが、そうした場合、大変費用がかかることになります。
そこで経済的にも鉄塔問の距離を長く、必要な鉄塔の数はできるだけ少なくしたいのです。
そういった理由から、電線をちょうど良い程度にたるませる必要があります。たるませることで重みに耐えているわけですが、
逆にたるみを大きくしすぎると力は楽になりますが、風のために電線の揺れが大きくなり、隣の電線と接触したりしてかえって危険になります。
したがって、送電線の設計には、適切なたるみの角度を決める計算式があります。
また、揺れは弱くても疲労劣化をしますので、通常はダンパと呼ばれる重りを送電線の中央に付けて、揺れるのを防いでいます。
その3へ続きます