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電力自由化の未来を占う要因
日本の電力自由化の今後を占うにあたり、重要となってくるのは以下のポイントです。
①中立的な広域系統運用機関を設立できるか
②発送電分離を実行できるか
③全面自由化が実現するか
④卸電力市場を強化できるか
⑤電力会社間の競争を実現できるか
⑥強力な新規参入者が現れるか
⑦「ヨコの自由化」や分散電源のための規制緩和がどれだけ進むか
⑧需要家向けサービスがどれだけ普及するか
①、②は、特に「広域系統運用」は電力システム改革の最重要課題の1つと言っていいでしょう。
これが電力会社の影響力の及ばない形で実現されると電力会社の市場支配力は大きく低下します。
電力自由化の進展が避けられない機運にあるので、電力会社は送配電事業を通じた市場支配力の維持に注力してくるはずです。
広域系統運用機能の支配力は自由化の未来を左右する重要なファクターとなりますが、送配電事業のノウハウ・人材は電力会社に集中しているため中立性の確保は容易ではないでしょう。
発送電分離は発電市場の競争性を高めるために重要な施策ですが、すでに改革案の表現が弱められるなど、電力会社側の圧力が顕在化しています。
分離の形態よりも、いかに中立性の実を取るかが問われることになるでしょう。
③については、福島第一原子力発電所の事故以来の市場的気運、燃料費高騰と値上げ申請のはざまで苦しむ状況が長く続いたことから全面自由化はほぼ既定路線と言っていいでしょう。
④については、既に小口電力取引市場の開設が実施されるなど、法改正なしの改革が先行しています。
問題は、それがPPSと電力会社の対等な競争が可能となる規模となるか否か、です。
そうなるためには、欧州で実施されているように、電力会社が一定割合の電力を取引市場に提供する義務を課すなどの政策が必要になってくるでしょう。
⑤、⑥は表裏一体の関係にあります。
電力会社の支配力が維持される中で、本格的な競争が繰り広がられる市場が生まれるのを期待することはできません。
そのためには、取引所の活性化、あるいは広域系統運用の実現などがカギとなります。
また、PPS間の統合、外資参入の許容などの政策姿勢も重要になるでしょう。
⑦、⑧については、政府が成長戦略にどれだけ位置付けるかが重要になります。
それがあれば、関心を持つ企業の層の厚さ、エネルギーコスト削減の需要家の意欲から考えて相当な推進力を期待することが出来るでしょう。
規制改革は容易ではありませんが、産業界の利益になる改革には、電力会社も反対しづらいため、成長市場として拡大すれば自由化の加速的要因となる事が期待できます。
改革案では、
2015年を目途にした「広域系統運用機関設立」
2016年を目途とした「小売全面自由化」
2018~2020年を目途にした「送配電部門の法的分離」
といったスケジュールが示されています。広域系統運用がほかの改革のカギとなる面が強いので、これを前倒しで行うとするのは慧眼です。
すでに政府も委員会が提示した案をほとんど受け入れていますので、今までにない改革が進むことは間違いありません。
一方で、上述のようにいずれの改革も電力会社の圧力などで骨抜きになる可能性は否定できません。電力システム改革がより中身のあるものとなるためには、何らかの加速要因が必要となります。
ポイントを8つ上げましたが、それぞれの部分に関して以下の記事もあわせてご覧ください。