21世紀、目覚ましい発展を遂げた技術として挙げられるのがITです。
現在の産業を語る場合、ITによる発展を考えないわけにはいかないでしょう。電力産業もそれは同じことです。
ITが拓く次世代の効率化
エネルギー分野ではIT化が猛烈な勢いで普及しています。
ITは様々な角度からエネルギーシステムを変革していきます。
まずは、エネルギーシステムのダウンサイジングを後押しし、画期的な省エネルギーを可能とします。
省エネの自動化
これまでの省エネと言えば、省エネ型の設備・機器を購入することやこまめに電気を切ったり出力を変えたりすることがメインでした。
いずれも省エネに対して知識や関心があることを前提とした行動になっていましたが、ITが普及することで省エネは普通の人が無意識化で行えるようになります。
2020年ごろになると、ITがすべてをやってくれるのが当たり前、と言うようになるので、電気をこまめに消したり空調の温度を調整するような手間は必要なくなるでしょう。
そのぶん省エネの普及度は比較的に向上します。
以上は省エネの構造が画期的に変わることを意味しています。
すなわち、これまでは「供給義務を負った電力会社が、需要家がほしいだけ電力を供給する、と言う電力システムの中で、需要家が一所懸命省エネや節電を行う」と言う構造をしていました。
そこには、電力会社と需要家の間のリアルタイムの情報のやり取りは発生していません。発電所の稼働率など需要家の頭の片隅にもなかったでしょう。
しかし、ITが発達する事により、電力会社は需要家の利用状況を今までとは比べ物にならないくらい詳細に知ることが出来るし、電力会社の都合(発電量の余裕、電気料金、省エネのお願いなど)を伝える事も出来るようになります。電気を効率的に使えるだけでなく「効率的でセキュリティの高いエネルギーシステムづくりに参加している」と言う満足感を得ることもできるのです。
こうした電力会社と需要家のインタラクティブ(双方向的)な関係は、お互いの事情が見えなかった時代とは次元の違う省エネや効率化を実現することになります。
再生可能エネルギーの不安定さを改善
電源についても、ITは多様化を可能とします。
再生可能エネルギーの大量導入は送配電の運営に負担を与えることは間違いありません。しかし、それを大量の蓄電池で解消しようとするのは、ITが発達する前の時代の考え方になります。
上述したインタラクティブな電力の需給調整が実現すれば、再生可能エネルギー導入に伴う変動の相当な部分を吸収できます。
蓄電池のような調整機能が全くいらなくなるわけではありませんが、実際の状況に応じて導入すればいいので、投資を最小化できます。
需要サイドが制御機能を持つこと、すなわち需給調整機能が分散されることも電力システムに大きな影響を与えます。
例えば、供給側をまったく意識しないで太陽光発電を行う住宅より、個々の住宅の中で需給バランスを制御した方が広域の送電網の負担が小さく済みます。ヨコの規制緩和が進んで、複数の施設間、あるいはコミュニティの中でインタラクティブな需給調整を行えば、広域の送電網の調整負担をより小さくすることが出来るでしょう。
2020年に向け、広域の送電網を管理する集中的な制御機能と分散された制御機能による最適な需給調整を目指して、エネルギー分野のITは進化を続けることになるでしょう。