いつの時代でも、再生可能エネルギーや省エネの導入に最も大きな影響を与えるのは化石燃料の価格と供給量です。
現時点での化石燃料の問題点や新しい化石燃料の可能性など、今後どのように進んでいくのでしょうか。
資源価格
石油価格は、世界同時不況と言われる中でも、100ドル/バレル前後で推移してきました。
今後、世界の景気が回復していけば150ドル程度まで上昇する可能性は十分にあります。リーマン・ショック前には、IEAは2020年に石油価格が200ドル/バレルになると予想していました。石油火力はすでにコスト競争力を失いつつあり、今後もこの傾向は続く見通しです。
石炭は経済性も高く、賦課量も豊富なため最も可能性のある火力発電用燃料の1つです。
実際に、欧州でもアジアでも石炭火力発電のシェアは日本よりも高くあります。
しかし、石炭火力を各国が積極的に導入し、天然ガスなどの調達価格に影響を与えるためには、2つの条件をクリアしなければなりません。
環境面での課題
CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)は石炭火力あら排出される二酸化炭素を固定するために期待されている技術ですが、経済性、環境性の課題を2020年までにクリアできるとは言いきれません。
一方で、日本では石炭火力の技術開発と環境アセスメント期間の短縮などの普及促進策が講じられています。
もう1つは、新興国での既存の石炭火力発電の環境性を改善する方策が明らかになる事です。
近年問題になっているPM2.5の原因の1つは環境性の低い石炭火力にあります。中国政府は石炭火力の改善にも力を入れるでしょうが、石炭火力から天然火力へのシフトにも同様に取り組むでしょう。
こうした点を考えると、日本などでは石炭火力は一定程度増えるものの、中国での石炭から天然ガスへのシフトなどにより世界的な燃料需要を緩和するには至らないでしょう。
期待されるシェールガス・メタンハイドレート
天然ガスについては、シェールガスへの期待が高まっています。
また、日本ではメタンハイドレートが当分の間最も注目されるエネルギー資源になるでしょう。
アメリカのシェールガス価格は、日本が調達している天然ガス価格の数分の1と言われています。
これを継続的に調達することが出来れば、原子力発電の稼働停止による燃料費の増大で苦しむ日本にとって恵みの雨となるでしょう。
また、ロシアなどは自国の天然ガスの拡販をはかっているので、シェールガスの普及は世界的な天然ガスの価格引き下げを誘導する可能性があります。
しかし、だからと言って日本での天然ガスの値段が急降下するわけではありません。
島国である日本は天然ガスをLNG(液化天然ガス)として輸入しなくてはけません。
LNGのコスト構造におけるガス燃料そのものの調達価格の割合は3分の1程度であるとされていますので、液化と輸送のコストが変わらなければ、大幅な値下げは期待できないでしょう。
しかも、シェールガスに置き換わるのは日本の天然ガスの一部にとどまるので、天然ガス全体の価格押し下げ効果は限られるでしょう。
一方で、中国などによる天然ガスの需要増加は価格を押し上げる要因ともなります。
北米以外にもシェールガスは賦存しますが、技術的な問題や環境問題で2020年までに国際市場に供給される量は限られてくるでしょう。
最近、日本がメタンハイドレートから天然ガスの採取に成功しましたが、現状ではメタンハイドレートの価格は日本の天然ガスと比較して数倍すると言われています。
開発ができたとしてもすぐに商用に供することは難しいでしょう。
かつてシェールガスも技術開発によって大幅なコストダウンが実現され、商業的な利用が可能となったことを考えると、
将来的にはメタンハイドレートの商用化も期待できます。しかし、2020年までにLNGの価格を下回ることはないでしょう。
以上、一部天然ガスのシェールガスへの移行、シェールガスによる他の天然ガスへの牽制効果、メタンハイドレートの可能性、中国などの需要増などを合わせると、日本の調達交渉力にどれだけの期待できるかが問われます。
化石燃料の調達環境が2020年までに大きく改善する可能性は低いでしょうから、市場に生まれる新しい需要をいかにうまく、いかに天然ガスなどの調達交渉のカードとして使えるかどうかがキーになるでしょう。