送電の役割その3
送電線はなぜ銅よりアルミを好むのか
発電所から消費地へ電力を送る役目をするのが送電線です。
その送電線には、架空送電線と地中送電線があります。
架空送電線は、発電所から都市や工業地帯まで高い鉄塔を使って空中に電線を架け渡して、電力を輸送する送電線のことです。
高い電圧の加わる架空送電線に使われる電線は、いずれも絶縁被覆のない裸の電線ですが、電流の流れやすい銅線を使わないで、銅に比べて電流の流れやすさの劣るアルミ電線が一般に使われています。
アルミが選ばれる理由
『銅線に比べて、アルミ電線は強度では負けるけれど軽さで勝つ』
第一の理由としては、アルミ線は銅線に比べて重量が3分の1という事です。
空中に電線を張るには、鉄塔に強い力が加わらないよう素材が軽いことが決め手になるのです。
ただ、アルミ線は強度に弱い欠点があるため鋼線で補強しています。
また、アルミ線の導電率は銅線の60%しかありませんから、アルミ線の断面積を太くして電流を多く流せるようにする必要があります。
しかしそれだけ太くなっても、まだ銅線よりも軽く、しかも補強の鋼線の引っ張り強さが大きいので、鉄塔と鉄塔の間隔を銅線の場合よりも長くとれる長所があるのです。
第二の理由は、コロナ現象を防ぐ
電気は高電圧になるほど電線の表面から空中に逃げようとする性質が現れます。
これをコロナ現象といいますが、コロナ現象が起きると送電中の電力の損失が生じたり、電波の伝わり方に悪い影響が出てきます。
コロナ現象は、電線が太くなるほど生じにくくなるので、アルミ電線は好都合なのです。
50万ボルト級の送電線になると、ますます太い電線が必要となりますが、1本の電線を太くしていくには限界があります。
そこで太い電線と同じ効果を持たせるため、1本分を2~8本の電線でまかなう複導体(あるいは多導体)方式が使われます。
このように、発電所と需要家の間には様々な設備があり、それらはすべて「送電」がきちんと役割を果たせるように考えられたつくりとなっているのです。