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新電力各社の料金プランの発表は、経済産業省資源エネルギー庁への電力小売申請が認可された後2015年10月ごろから始まるだろうとみられています。現状では各地域の託送料金が決定され、おおよその電気単価の見当がつくという段階でしかありません。しかし、海外、特に欧米に目を向けると電力自由化が行われてから既に10年以上が経過した国が多数あります。今回はそんな国々の料金プランの変遷を参考に新電力の料金プランがこれから歩んでいくであろう4つのステップについて徹底的に考えていきます。
ステップ1:わかりやすいプランが求められる第一段階
電力自由化が開始する直後にはとにかく分かりやすい料金プラン、比較しやすい料金設定が求められます。今まで、自動的に一般電気事業者との契約をしていた一般需要家は電気料金に関して比較検討した経験がありません。そのため、どの会社のどのプランが安いのかフラットに比較できるようなわかりやすいプランが求められます。
単純に比較できないのが電気料金
「電気」という商品は、どこが売っても商品自体に変化をつけることはできません。にも関わらず料金を単純に比較することもできなかったのが電気です。一般電気事業者のなかでも電気の計算が二通りあるのです。
アンペア制と最低料金制で異なる料金プラン
東京電力や中部電力が設定している料金プランは「アンペア制」と呼ばれる料金体系で、契約アンペア数によって基本料金が変わるというものです。一方で、関西電力や四国電力は「最低料金制」を採用しています。これは、アンペア数にかかわらず、使用電力量によって電気料金が決まるものです。この二つの違いを知っている一般需要家がどれだけいるでしょうか?これだけ見ても、新電力はもっとわかりやすく比較できる料金プランの設定が求められるのにも頷けます。このように、一般需要家の乗換を促して、低料金を売りにして比較検討のしやすい形を作り上げていくのがステップ1です。
ステップ2:他の光熱通信費などとの訴求が求められる第二段階
料金での勝負がメインだった第一段階で、電力会社の乗換が一巡すると、次は付加価値での勝負になってきます。
セット割からさらに一歩進んだ連携を
今、新電力はセット割を用意して一般電気事業者の牙城を崩すと言われています。しかし、単純にセットにして割引をするだけでは、ステップ1の域を出ていません。ステップ2ではより他のサービスと結びついた電気プランが求められます。
2年縛りで在庫セール!?
卸電力を卸電力市場から新電力から仕入れる場合、規模の経済が働きます。より多くの電気をより定期的に仕入れる新電力に対しては料金が安くなることが期待できます。そこで、新電力は定期的な需要予測を立てやすい2年契約などの固定プランを用意してくるでしょう。それを元に建てた需要に届かない場合には年度末に卸電力市場から仕入れた電気の在庫処分セールとして安い価格で供給するというような事が考えられます。このように、サービスの幅の広い付連携を各新電力がプランに組み込んでくるのが、ステップ2です。
ステップ3:電気が金融商品化へと変貌を遂げる第三段階
他のサービスとの連携という付加価値創出が限界に達すると、電気は金融商品へと変貌を遂げると考えられています。「同時同量の原則」をとる以上、予測や価値の変動と結びつきやすいのが電気です。その特徴を生かして金融商品として電気を販売する新電力が誕生してくるのです。
定額制と利息を組み合わせた料金体系が出現する
1か月分の電気料金を定額に設定する新電力が現れます。彼らは、月初に定額の電気料金を徴収し、それを元手に卸電気市場で安く電気を仕入れることに奮闘し、さらにはその資金で投資運用を行うのです。これにより、利益が出た分を一般需要家に還元することで低料金を実現することができるようになります。この仕組みを実際に行っている新電力が既にアメリカにあります。
ステップ4:電気がIoT、スマートハウスに組み込まれる最終段階
最終的には、IoTやスマートハウスといった取り組みが完成します。現在でも、瞬間ごとの消費電力を見える化することができるスマートメーターの普及が進んでいます。しかし、単に見える化することによって一般消費者が得られるメリットはあまり大きくありません。このステップ4は、見える化から一歩進んだ形が実現した世界です。つまり、料金と直結したスマートメーターの活用です。日単位での電気料金の請求が可能になったり、機器単位での電気プランの適応できるようになったりその可能性は無限に広がります。自分のライフスタイルに完全にカスタマイズした料金プランを設計することが可能になるのです。
いかがでしょうか。電気料金が自由化後たどるであろう道のりが見えましたか?最終段階の料金プランが現実のものとなれば、電気料金はより身近で、それえぞれの消費者の心をつかむものになりそうですね。
参照元:日経エネルギーNext 2015年9月号