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皆さんは、電気代を支払いう時に、このような疑問を感じたことはありませんか?
・先月よりも電気を使っていないはずなのに、電気料金が高くなっている?
・いつも同じ量の電気を使っているはずなのに、毎月電気料金が違う?
こんな時、毎月届く、電気代の検針票を注意深く見てみて下さい。
そうすると以下の2つのことに気づくと思います。
・料金内訳に「燃料費調整額」という欄があって、金額が書かれている。
・「燃料費調整のお知らせ」欄に何か数字が書かれている。
上記の疑問の答えはこの「燃料費調整額」というものにあることが多いです。
ではこの「燃料費調整額」とはどのようなものなのでしょうか。
また、どうして「燃料費調整額」は月ごとによって、合計額からわざわざプラスになったりマイナスになったりするのでしょうか。
その理由を探ってみましょう。
そもそも燃料費調整額って?
燃料費調整額とは燃料費調整制度によって算出、発生します。
それでは燃料費調整制度と、プラスになったりマイナスになったりする原因からお話しします。
1、ヒントは電気の発電方法と発電の原料にあります。
2017年6月現在、発電の主力は火力発電です。
特に東日本大震災後は原子力発電所が停止していることもあり、その割合は増加しています。
例えば東京電力では火力発電での発電量が90%に達しています!
その中でも最も多く使われている原料はLNG(液化天然ガス)で、全体の3分の2を占めています。
また石油や石炭も燃料として使われています。
LNGや原油などの化石燃料は、国際情勢や為替などの影響により価格は時価となっており、またその価格は時期により大変異なります。
2006年から2015年までの価格推移を見ると、最も安い時期と高い時期では3~4倍の価格差があります。
特に安かった時期は2009年前半、高かった時期は2008年後半と2014~2015年です。
このLNGや原油などの化石燃料の価格推移が電気代に反映してくるわけです。
2、燃料費調整制度について
化石燃料は国際情勢や為替などの影響により、大きく値動きするものです。
これに対応するべく、1996年1月から燃料費調整制度が始まりました。
燃料費調整制度主な目的は以下の2点です。
・原料価格の変動部分を価格に転嫁することで、電気事業者の経営を安定させること
・電気事業者の経営効率化の成果を明確にすること
簡単に言うと、「燃料費調整制度」とは
電力会社に対して発電のための、化石燃料の価格が変動して負担になる部分は価格に転嫁して良いよ!
その代わり経営の効率化もしっかりやって下さいね!
という制度です。
当初は四半期ごとの調整で、約半年前の価格が燃料費調整額として反映されるしくみでした。
平成21年度からは急激な原料価格の変化にスピーディーに対応するため、3ヶ月前~5ヶ月前までの原料価格の平均値が燃料費調整額として反映されます。
燃料費調整額の算定方法!!
また、燃料費調整額算定の際には、基準燃料価格というものがあります。
石油やLNG、石炭の貿易統計価格をもとに基準燃料価格と照らし合わせ、高ければ燃料費調整額はプラスに、安ければ燃料費調整額はマイナスになります。
化石燃料が安く入手できれば、電気料金から値引きされ、高ければ電気料金に加算されるのです。
実際に東京電力2017年5月分や6月分の場合は、燃料費調整額により1kWhあたり3円以上の大幅な値引きとなっています。
燃料費調整額は電気料金にどのくらい影響する?
燃料費調整額が変化する大きな要因は、時価である原油や石炭、LNGの価格変動です。
また原料の割合や電源構成の違いにより、各電力会社間でも異なります。
2017年6月、現在は5ヶ月前~3ヶ月前の平均値を取るようになっていますので、急激に燃料費調整額が変わらないようになっています。
燃料費調整額が電気料金に影響する割合は結構高い!?
燃料費調整額は毎月変動していますから、電気料金に影響する割合も異なります。
東京電力2017年5月~6月分の場合は、電気料金のおよそ1割相当額の値引きとなっています。
新電力は燃料費調整額の対象か?
新電力の場合も、燃料費調整額を採用する事業者が多いようです。詳しくは各電力会社のホームページ等にてご確認ください。
自然エネルギー100%だけで構成される新電力であっても、燃料費調整額の対象になることがあります。
詳しくは各電力会社のホームページ等でご確認ください。
おまけ1 〜企業努力でどうにかならないの?〜
LNGの単価は、2015年現在で1kWh当たり10円80銭とされています。
東京電力の旧家庭用である従量電灯Bプラン・第1段階料金が1kWh当たり19円52銭ですから、原料を調達するだけで料金単価の55%を占めることになります。
これは高い時期の数字であり、一方で安い時は1kWh当たり3円台ということもあるでしょう。
この場合は、原料費は価格の20%未満ということになります。
これだけの価格差があると原料の価格に大きく左右される経営となってしまいます。
その時の情勢によって、価格に対する原料費の割合が40%近く、例えば30%から70%まで変動する経営というのはどうでしょうか。
これは人件費や販売管理費などを含まない、純粋に原料費だけの価格ですから、原価はさらに高くなります。
企業努力で対応できる限度を超えているといえるでしょう。
おまけ2 〜燃料費調整制度は他の業界でも採用されているの?〜
燃料費の変動を価格に反映するしくみは、化石燃料を使用して運航する航空業界や船舶業界でも採用されています。
1.航空業界
国際線では、燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)が採用されています。
例えばANAで2017年4月から7月に購入する場合、日本発ヨーロッパ行きの場合は片道7000円、日本発韓国行きの場合は片道300円が運賃に加算されます。
2.船舶業界
船舶では燃料油価格調整変動金として運賃の中に含まれています。
例えば東海汽船によると、2017年6月に伊豆諸島航路を利用する場合、運賃のうちおよそ1割相当の金額が燃料油価格調整変動金となっています。
まとめ~燃料費も電気料金を決める大きな要素です~
いかがでしたでしょうか?電気料金を決める上で、燃料費は大きなウェイトを占めていることがおわかりいただけたのではないでしょうか。
まとめますと、以下の通りとなります。
・火力発電の原料は化石燃料である石油・LNG・石炭であり、その価格は常に変動しています。
その価格は時には数倍になることもあり、原料費だけで電気料金の半分以上を占めることもあります。
・燃料費調整制度は化石燃料の価格変動を燃料費調整額として価格に転嫁し、経営の安定を図るための制度です。
・燃料費調整額はプラスにもマイナスにもなります。時には電気料金から1割以上値引きとなることもあります
・新電力や自然エネルギーだけで構成されている電力の場合でも、燃料費調整額の対象になることがあります
実は翌月分の燃料費調整額は、電力各社のホームページや検針票で事前に告知されますので、気を付けて見てみましょう。
燃料費調整額は電気料金を大きく変える要因ともなりますので、燃料費調整額が上がる時には電気の使用を見直してみることもおすすめです。
参考:資源エネルギー庁「燃料費調整制度について」