成長する新興国市場
新興国では発電事業は大きな成長産業となっています。
巨大な人口を抱え、経済成長が旺盛なアジアを中心に世界では2010年から2035年の間に8兆kWh もの発電需要の増加が見込まれています。
その数字は、実に国内の電力市場の8倍もの市場規模となります。
新興国の電力会社は、自己資金での発電所建設にも限界があるため、IPPとして海外からの投資を呼び込むのが一般的となっています。
このような環境下で、現在でも、日本の商社、一部の電力会社、ガス会社などは石炭火力や天然ガス火力を中心に海外IPP事業を手掛けています。
しかし、国内の発電事業と一体となった事業展開が行われてきたとは必ずしも言えません。これまでの日本の発電市場が限られた事業者によるガラパゴス市場であったことが原因としてあげられます。
こうした国内市場と海外市場が分断された事業構造は、日本企業にとってリスクがあります。
インフラ事業では、制度や慣習に熟知した国内市場でしっかりとした収益基盤を築いたうえで、海外市場に展開するのが常道とされています。
国内市場と海外市場の市場構造がかけ離れていると、国内での経験や収益を海外事業に結び付けるのがむずかしくなってしまいます。
昨今、シーメンスやGEなどの海外有力メーカーは、機器納入を切り口に国内市場での事業拡大を狙っています。
まずは、開かれつつある日本の発電機器市場で足がかりを築いて、電力自由化を契機にIPPやPPSといった発電市場へも参入してくると考えられます。
すでに、発電機器については、彼らのコスト競争力を脅威とする声も聞こえてきます。国内市場が競争市場となれば、電力供給事業についても日本企業の強力なライバルとなるでしょう。
日本企業にとって、その分だけ厳しい市場となりますが、電力供給事業で成長するには避けられないプロセスと考えるべきでしょう。
ドイツのRWE、E.ONやフランスのEDFがイギリスで事業展開を行っているように、国内市場で一定規模に到達した企業は、拡大が難しい国内から飛び出して海外展開をもくろみます。
国内の収益基盤を基に、成長のために海外へ投資を行うのは自由化の自然な帰結なのです。
そして、そうした厳しい状況の中でこそ、電力会社の発電部門、PPSとなる重厚長大型企業、重電メーカー、石油・ガス会社は成長性のあるクロスボーダーの電力供給事業者となる事が出来るのです。