私たちの身の回りにある物には、必ず歴史があります。エアコンも同様です。世界で初めてできたエアコンは、名前・目的も現在とは異なるものでした。ここでは、こうした細かな変遷もたどりながら、“エアコンに関する歴史”を解説していきます。
「“エアコン”という名前の起源」
元々、エアコン=エア・コンディショナーではなかった!?
「エアコンつけて!」「エアコン買い替えたいなー」と普段何気なく言っていますが、そもそも名前の由来はどこにあるのでしょうか。
エアコンが“エア・コンディショナー”の略であることはご存知かと思います。この名前の原点は1906年、アメリカの織物工場内の“湿度”を保つために作られた仕組み、“エア・コンディショニング”(=空気調和)から来ているそうです。
パソコンが軍事目的、冷蔵庫が医療目的で開発されたのと同じで、エアコンも元々は家庭用ではなかったのですね。では次に、今の名称である、“エア・コンディショナー”になった理由と経緯を説明していきます。
“エアコンディショナー”になった理由(ワケ)
エア・コンディショニングの“conditioning”とは「調整・調節」という意味なのですが、英語では不可算名詞(数えられない名詞)として分類され、物の名前としては不適切なのです。簡単に言うと、お店などでエアコンを購入するときに、「エア・コンディショニング1台ください!」とは言えない、ということです。
それが、エアコンの増産化・商用化の流れの中で、製品として“数えられる名前”が必要になりました。こうした経緯から、可算名詞(数えられる名詞)である“conditioner(コンディショナー)=調整する人(もの)”という言葉が使われていくことになったと言われています。
「エアコンが日本で普及した“経緯”とは」
初めはあまり普及しなかった…
日本で本格的なエアコンが生産されたのは、戦後すぐのことです。当時はアメリカからの技術が積極的に取り入れられてきましたが、エアコンもその1つでした。
日本では、“ルーム・クーラー”という名称で登場しましたが、
①ウインドウタイプである、②大きくて高価、③戦後経済の疲弊
などの理由から、当初家庭にはそれほど普及しなかったそうです。ウインドウタイプは、室外機と室内機が一体化していて、窓枠にはめ込むように取り付けられるものですが、今でも古い木造アパートなどで時折見かけます。
60年以降に入ってやっと、セパレートタイプ(室外機と室内機が別々の型)や暖房・除湿機能を持った製品が本格的に登場し、高度経済成長の後押しとともに、爆発的に家庭へ普及していくことになります。このころから、現在でも使われる“ルーム・エアコン”という名称になりました。
日本のエアコンは“付加価値の時代へ”
エアコンの進化は現在まで続いています。
その変遷を2つの時期に分けて見てみましょう。
『1952年~72年』
・ウインドタイプ、ルームクーラーの生産開始
・ルームエアコンへ改称
・セパレートタイプ、家庭用タイプの普及
・壁掛け式エアコン登場
・室外機1台で2室対応タイプ(多室型)が登場
『1974~87年』
・省エネ性能を持つエアコンが登場
・タイマー機能
・マイコンシステムにより温度、風量のコントロールがより精密に
・温度を感知し運転を調整するセンサー機能搭載
・寒冷地でもパワーを発揮するインバーターエアコンが登場
いかがでしょうか。見ていていただければお分かりかと思いますが、74年以降は単なる利便性だけではなく、様々な“付加価値”が機能としてつき、操作性と快適性が格段に向上しています。現在搭載されている“人感センサー”や“自動掃除機能”などの最新機能も、こうした進歩が積み重ねられた結果なのです。
「別の角度から見るエアコンの歴史」
エアコンに関する“事故と法律”
エアコンは今や一家に一台以上の普及率ですが、その分事故も多くなりました。平成26年度には、約50件の火災事故が発生しています。主な原因は、コードの継足・部品の劣化・コンセント部分のホコリ蓄積、などだそうです。近年では特に、エアコンに関する安全基準が注目されています。
また、普及によってエアコンに関わる法律も作られてきました。例えば、グリーン購入法・フロン排出抑制法などがその代表的なものです。どちらも主に温暖化・環境破壊に配慮することを目的とした法律ですが、“エアコン普及と環境保護のバランス”は今後も世界的かつ将来的な課題となるでしょう。
時代と社会を反映して作られる“エアコン史”
このように、エアコンについている様々な機能や、環境関連の法律などを初めとしたエアコンを取り巻く事情は、時代と社会の趨勢と共に作られてきたものなのです。
それは、エアコンがいかに私たちに身近な存在であるかということにつながっています。