電力市場において、日本企業がクロスボーダーの事業者となるためには、いくつかの観点が必要となります。
クロスボーダー事業者となるには
まずは、国内でも海外の発電事業を視野に入れた仕様、事業構造、収益管理を徹底することです。
国内の事業基盤を生かして、海外市場で戦うには、事業構造や設備も標準的な使用に統一し、海外で成り立つコスト構造、リスク管理体制を構築しなくてはいけません。
もちろん、国によって事業環境は異なりますが、そのための仕様は国際的な標準に付加されるべきものでしょう。そのうえで、「国内で収益基盤を築いて海外で戦う」と言うインフラ事業の王道のポートフォリオを築くことが必要になってきます。
海外に展開することを念頭に置き、国内で事業体制を整備しておくことは、現地顧客からの信頼感を獲得することにもつながるでしょう。
トータルな電力事業
国内と海外をまたぐ、クロスボーダーの市場で強大になった電力供給事業者のなかには、海外でも発電・小売だけではなく、送配電の運用にも関与するトータルな電力事業を視野に入れているケースも散見されます。
日本の電力会社に高い需給管理能力を求める新興国も少なくないので、日本としてトータルな事業を展開することに対するニーズを掘り下げる必要があります。
その場合には、電力会社とのパートナーシップを展開戦略に組み込んでおく必要があるでしょう。
また、海外では顧客基盤やネットワークなどの事業基盤の確保が不可欠となるので、一から事業基盤を構築するのではなく、現地企業の買収も含めた拡大戦略をとる事も必要です。
これまでは、総括原価主義の中で安定した収益を上げる一方で、規制された電力料金で得た収益を海外投資に回すことについて、電力会社は慎重なスタンスをとるケースが多かったです。これが自由市場となる事で、電力会社が新たな成長を求められるようになり、発電の外部活用などの効率化を図る一方で新しいビジネスにトライせざるを得なくなります。
そうなれば、日本としての発電事業の海外展開の可能性は大きく拡大するでしょう。
電力小売り自由化を機に
自由化によって国内と海外市場を隔てていた多くの障壁が取り払われることは間違いありません。そこで勝者となるのは、縮小する国内市場のシェアに固執する事業ではなく、海外の成長を取り込めるクロスボーダー視点を持った事業者になるでしょう。