日本におけるFIT制度
日本のFIT制度では、それまでの日本国内の太陽電池システム価格に合わせた高い買取価格が設定されました。
日本にとってのFIT制度は、再生可能エネルギーの普及促進に加え、自国産業の振興としての意義があるからです。
その結果、以前は欧州市場重視だった日本メーカーも国内市場を重視するようになってきました。
発電事業への投資意欲が強く、国内の引き合いが急増している事が主な要因と言えます。
国際競争力の現状
国内市場の活性化と言う意味では、政府の狙いは達成されましたが、国内メーカーの競争力はまだまだ海外のそれではありません。
ドイツの太陽光発電の買取価格は20円/kWhを切り、中国に至っては15円/kWh程度となっています。
日本の高い買取価格に企業体力を合わせていたら、世界市場では到底太刀打ちできないでしょう。
事実、2007年頃まで世界の生産量ランキングのトップ10に、シャープ・京セラ・三洋など数社が入っていましたが、現在はシャープ1社のみランキング入りしている状況です。
国としても、2007年頃は世界生産量の半分のシェアを獲得していましたが、現在は中国・台湾・北米に続く4位にとどまっており、シェアも8%程度に過ぎません。
価格競争力が決め手と言う市場構造を考えると、競争環境は今後ますます不利になっていくでしょう。
その中で、日本のメーカーにとって一時の「オアシス」となっているのが、日本市場なのです。
外資の参入割合が3割を突破しているものの、市場規模が目下拡大中のため、日本メーカーの売り上げは増加傾向にあります。
さらに、発電事業者は信頼性重視と言う名目で、少々高値であっても日本のメーカーの商品を選ぶ程度の余裕があります。
今後の再生可能エネルギー
日本メーカーは、国内のこうした市場構造を理解しています。
例えば、メガソーラー市場と住宅市場を分けて捉え、前者は一過性のバブルとする一方で、後者を中長期的な主戦場と見て周辺機器と組み合わせた高付加価値のシステム商品に力を入れています。
産業政策はこうした企業動向を踏まえて制度設計をする必要があります。
つまり、国民負担を増やし国際競争力強化につながらないメガソーラーパネルをではなく、住宅などを対象とした高付加価値の太陽光発電システムを重視するような方向に舵を切るべきでしょう。
現状、住宅向けの太陽光発電では、省エネルギー意欲をそがないように余剰分だけを買い取る事としています。
この仕組みですと、太陽光発電に合わせて電気の使い方を工夫し「地産地消」を実現した家庭では買取がゼロになってしまいます。
同時に、発電量の多い時には需要を増やし少ない時には需要を抑制する、といった需給一体のシステムは、現在のFIT制度の下ではインセンティブが得られなくなってしまいます。
エネルギー政策の本来の趣旨を考えるなら、こうした需給一体こそ再生可能エネルギー政策の王道と言えるでしょう。
FIT制度のその先
四半世紀にわたり、合理的なアプローチを取ったドイツですら問題が顕在化しているFIT制度は、再生可能エネルギー導入の過度的な施策に過ぎません。
中期的に見れば、地産地消と言う再生可能エネルギーの王道に立ったシステムが競争力を持つようになるのではないでしょうか。
日本のメーカーに一時の安堵を与える方向ではいつまでも世界での競争力は身に付きません。
世界で勝てる商品作りを促すような制度への転換が今後のカギとなってくるでしょう。