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高齢化社会の進展に伴い、介護を必要とする人は増加を続けています。その一方、介護職は重労働ということもあり、常に有効求人倍率が高く、慢性的な人手不足の職種でもあります。
介護は高齢者に向き合う職種ですから、IT化といってもOA機器の導入程度で、IoT化とは無縁と考えている方も多いかもしれません。
しかし、介護もまたIoT化によって、大きな恩恵を受ける職種です。
具体的にはどのようなメリットがあるのか、詳しくみていきましょう。
また、IoTって何?聞いたことあるけど、詳細は分からないという方は以下関連記事を御覧ください!
5GやIoT化が介護の分野に与えるメリットとは?
5Gにはいろいろな特徴がありますが、中でも介護分野においては、多接続という特徴がIoT化の進展に役立つことでしょう。
1か所のアンテナで多くの通信機器とやりとりできるようになりますので、これまでIT化とあまり縁が無かった介護機器でも、通信機能が搭載されるようになるでしょう。
この結果、高齢者本人だけでなく、介護職員等にとっても様々なメリットが期待できます。
施設介護がIoT化されるとどうなる?
施設介護では、すでにアズパートナーズがIT企業と協業して開発した「EGAO link」や、トリプル・ダブリュー・ジャパンによる「D Free」等があります。
これに限らず、入居者の睡眠状況や呼吸状態、ベッドにいるかどうか等をシステム化することにより、以下のようなメリットが考えられます。
1.確実な利用者対応
異常時のチェックを入居者のコールボタンで知らせたり、緊急時にスピーディーに対応できるとは限りません。
定期的な見回りについても人手不足もあり、介護士の頑張りだけでは対応しきれない場合も多くあるでしょう!
特に突然意識を失ったり、ベッドから転落するケースでは、コールボタンを押せないことも多いでしょう。
これまでは「そんなことを言われても困る」というのが実情でしょう。
しかしIoT化(「EGAO link」や「D Free」)により、かなりの部分を機械的なチェックに任せられるようになりました。
EGAO link 〜リアルタイムで情報を捉え、伝達する
5つの基本機能
1、ご入居者の情報の記録がスマホで、簡単に入力出来る
2、記録された情報は、リアルタイムに、しかもスタッフ全員で共有できる
3、ベッドセンサーがスマホに連動して、ご入居者が起きているのか寝ているのかリアルタイムに把握できる。また1分間の呼吸数もわかる。
4、こうしたセンサーで異常やナースコールが検知されると、スマホにアラート。スマホで応答もできる。
5、こうした状況もすべて自動で記録され、その情報をスタッフで共有できる
ベッドにいるかどうか、呼吸状態や睡眠状態はどうか等を確認することができます。これにより、体調に異常がないか、また夜間に徘徊していないか等をチェックすることができるようになります。
また、常にリアルタイムで情報を共有することができるようになることで緊急時の対応がスピーディになるでしょう。
入居者の状態の記録は機器が行ってくれますから、紙でチェックする作業やパソコンに入力する作業が大幅に軽減されます。
D Free 〜排泄予知でケアの効率化〜
体に影響がない超音波を利用し体内の変化をとらえ、排尿前後のタイミングが来ると、お手持ちのモバイル端末に通知します。
施設介助では自力でおしっこを出すことができず、誰かの助けを借りなければならない方も多いです。このような方が漏らすことの無いよう、おしっこが貯まったら自動的に知らせる機器も実用化されています。
また排泄情報を自動で記録し、排泄周期をわかりやすくアウトプット。排泄情報はユーザーごとに自動で記録され、排泄の傾向を簡単に把握することができます。
排尿時間はもちろん、オムツやパッド交換の記録を簡単につけることができるなど、多様な昨日が実装されています。
残業の削減と労働環境の向上を実現
入居者の状態の記録や管理を機器が行ってくれる部分が増えることにより、紙でチェックする作業やパソコンに入力する作業が大幅に軽減されます。
このことにより事務作業の軽減につながり、残業の軽減と労働環境の向上が実現されます。
労働環境の向上により、伴い離職率の低下や、『介護士=重労働』というイメージを減らすことで、目指す人も多くなり慢性的な人で不足の解消につながるでしょう!
また、介護のIotは将来的に在宅での介護にも大きな助力になることは間違いないでしょう。
利用者対応の質がアップ
介護のIoT化は、利用者対応の質のアップにもつながります。
たとえば呼吸状態を1分間ごとに記録することは、人力では大変な労力を要します。
しかしIoT化により、24時間絶えず記録し、リアルタイムで確認することができます。人力よりも手間をかけずに、かつ質の高いデータ収集を行える事例といえるでしょう。
夜間の見回りも楽になることでしょう。
特に見回りで起こされることが少なくなりますから、入居者もぐっすり眠れ、快適な毎日を送ることにつながります。
また記録を取る時間や不必要な見回り等の時間が減りますから、その分を入居者へのサービス向上につなげることができます。
たとえば、今までよりももっと楽しいイベントの企画が増えてくるのではないでしょうか。
居住環境の快適度が向上
介護のIoT化は、居住環境の快適度向上にもつなげられます。
現在では室内にいる人数によって空調をコントロールしたり、人のいる方向に重点的に冷風・温風を向けるといった空調機器が登場しています
。このような機器を活用することにより、快適度の向上と電気代の節約を両立することが可能です。
在宅介護でもIoT化のメリットは大きい
在宅介護においても、IoT化は介護の質の向上に役立ちます。特に有事の際の対応が、今までよりも短時間でできるようになることが期待されます。
身体が不自由な場合や足腰が弱っている場合、ちょっとしたことで転倒し、けがをすることになりかねません。
このようなけがをきっかけに寝たきりになることも多いですので、未然に防ぐ工夫ももちろん必要ですが、起きた時に適切に対処することも大切です。
このような事態に備える方法として、自宅内の高齢者の寝室などにセンサーを設け、一定時間内に動きが無い時は監視センターや家族等に自動通報するサービスがあります。これにより異常にすばやく気づき、適切な対応を取ることが可能となります。
ベッドセンサーで寝返りなどの状況をスマホで確認
次に施設内介護と同様、ベッドにセンサーを設置し、状況を通信回線を通じて知らせることも可能となるでしょう。いつもと同じ時刻に起きてこない、寝返りを全く打たないという事態を検知し、対応を取ることが可能になります。
また最近では、高齢者が使うカートに通信機能を搭載し、利用者の歩行距離や歩行速度、機器の傾きや転倒などといった情報を検知することも可能となりました。
異常時に家族や介護施設などへアラートを通知することにより、健康状態の異変や転倒事故などの事態に対して、適切に対応することが可能となります。
将来は自宅内に監視カメラを設置し、脈拍等の身体の状態とあわせ、高齢者を24時間見守ることも可能となるでしょう。
プライバシーにも配慮する必要がありますから、普段はAIで無人監視しており、何かあった場合は家族の承諾を得て医療関係者や介護士が画像を見るという仕組みです。
いつでも見守られている、適切な助言が得られるという安心感は、在宅介護の精神的な負担を軽減させることにつながるでしょう。
まとめ ~介護のIoT化は、介護の質の向上と人手不足を一挙に解決する切り札~
これまで、介護のIoT化について解説してきました。一見IoT化と無縁と思われがちな介護ですが、さまざまな活用が可能なことがおわかりいただけたのではないでしょうか。
何よりも、介護の質の向上と、人手不足を一挙に解決できることが魅力です。
利用者は「何もない時は見回りに来てもらわなくてもいいけれど、何かあればすぐ来てほしい」と思っているものです。
これまでは何かあれば、ご自身でボタンを押すか、職員の見回りで見つけてもらうかに限られていました。また在宅介護でも同じで、自分から助けを呼ぶか、訪問職員や家族が見つけるかに限られるものです。
しかしIoT化によって、自分で声を出せないほど苦しくても、見回りを待つ必要はなくなります。自動的に異常が職員や家族に通知されますから、何もしなくても駆けつけてもらえ、必要な対処を受けられることがメリットといえます。
また従業員や事業者にもメリットがあります。不要な見回りも、記録を付ける必要からも解放されれば、残業時間も減るでしょう。残業が減れば人手不足も自動的に解消、または緩和されることにつながります。働きやすい職場ということになれば、採用もしやすくなることに繋がり、事業の発展につながるでしょう。
介護職員は外国人を採用することが真剣に議論されているほど、人手不足の職種でもあります。
介護の現場を良くするためにも、IoT化が積極的に求められる職種といえるでしょう。