2012年7月 日本でも再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)が始まりました。
FIT制度とは、再生可能エネルギーによる電力の買い取り額を法律で保証するもので、再生可能エネルギーの発電事業への参入と普及を促し、コスト低減することを目的としています。
日本におけるFIT制度
1kWh当たりの買取金額は以下の通りです。
・太陽光発電 34~42円
・風力発電 23.1~57.75円
・水力発電 25.2~35.7円
・地熱発電 27.2~42円
・バイオマス発電 13.65~40.95円
いずれも国際価格よりだいぶ高額な設定となっていますが、東日本震災後の電力不足や原子力発電からの転換の機運を受けて決定へと至りました。
発電手段によって買取価格に差異が出ているのは、技術水準・発電規模・技術特性などによって発電コストが異なるためです。
買取価格のみでの比較では、どの再生可能エネルギーを優遇しているのか判断するのは難しいです。
単価を決定した調達価格等算定委員会の資料によると、買取単価をもとにした発電事業のIRR(内部収益率)は、太陽光発電(10kW以上)が税前6%とされているのに対し、買取単価の低い風力発電(20kW以上)は7%、地熱は13%となっています。
風力発電を超える設備容量
一方で、FIT制度の開始から1年も経過しないうちに、参入する発電事業者の偏りが明らかになっています。
制度開始後、2012年11月末までに認定を受けた設備容量は、太陽光発電が326万kW、風力が34.3万kW、その他合計が4.3万kWとなっており、太陽光発電が突出しています。
導入自体は次年度になるものもありますが、326万kWという導入量は、風力発電のこれまでの累計導入量250万kWを軽く上回る数字です。
太陽光発電の参入のしやすさ
なぜこのような偏りが生まれたのか、それは買取単価の高さもさることながら、太陽光発電システムの特性にあると考えられます。
つまり、環境アセスメントを必要とせず、短期間で導入可能であると言う事が新規参入するにあたりその他の発電手段と比較しハードルが低かったと言えるでしょう。
環境アセスメント(環境影響価)とは、開発事業の内容を決めるにあたり、それが環境にどのような影響を及ぼすかを、あらかじめ事業者自らが調査・予測・評価し、その結果を公表し、一般の方々・地方公共団体などから意見を聴き、それらの結果を踏まえて環境の保全の観点から、よりよい事業計画を作り上げていこうと言う制度です。
風力発電は、6kW以上の事業では環境アセスメントが必要となり、稼働に至るまでには3年の期間を必要とします。
環境アセスメントの義務を回避するために、2MWの風車3基ずつ事業化する発電事業の小分けも広まっていますが、たとえアセスメントを回避したとしても、景観・騒音問題があります。
また、さらに時間を要するのが、地熱発電です。
試掘から始めって最終的な発電開始に至るまで大型のものだと10年ほどかかります。
これらに対し、日照の良い広い場所さえ確保できれば導入が容易な太陽光発電に投資が集中するのは当然と言えるでしょう。