日本における原発の将来を左右する6つのポイント
①原発ゼロの可能性
②原子力発電の経済的な意義
③原子力規制委員会を頂点としたガバナンスの実現の可能性
④原子力発電のコスト競争力
⑤原子力発電の再稼働
⑥原子力発電の新設
原発ゼロの可能性
①については、原子力発電の導入経緯より、どの政党が与党になったとしても日本だけの意志では決定できないのが実情です。
今日の世界情勢を見るに、そう簡単には原子力発電を撤廃することはできないでしょう。
原子力発電の経済的な意義
②については、前章で述べたように発電コストよりも、原子力発電と言う選択肢を待つことによる間接的な経済効果が重要視されます。
経済性と言う観点から見ると、原子力発電の維持を後押しする要素となることがうかがえます。
③以降については、原子力発電の公正なガバナンスに対して、どの程度の圧力がかかるかによっても変わってきます。
現状考えられている原子力規制委員会を頂点とするガバナンスは、ある程度厳格さと公正さを維持するのではないかと思われます。
弱まるかつての電力業界
電力需要はすでに右肩下がりになっている事や電力の自由化の影響から、電力の投資額はピーク時の半分にも満たない状態です。
今後、省エネや節電がより一層すすみ、需要はさらに下がる事が予想されます。
東京電力の経営改革では、競争調達の割合が極端に低い事が問題視されました。
今後は、電力会社も競争調達を強化せざるを得なくなるでしょうし、コストの透明化も進むと思われます。
また、発送電分離などで、PPSやIPPによる、受注者に厳しいコスト競争を強いる調達も増えるのではないでしょうか。
自由化により電力会社のコスト削減のプレッシャーも増大し、労働組合の規模も小さくならざるを得ません。
以上の理由から、ゼロにはならないまでも電力業界を維持するための資金とインセンティブは相当程度減る事になります。
一方で、政治家・行政・有識者にとって、「国民の意向を無視した」と言うレッテルを張られるリスクはついて回りますので、原子力発電の今後については慎重に進めざるを得ないでしょう。
上記にて挙げた要素から、原子力発電の今後の動向は以下のようになるのではないかと予想されます。
・当面は、原子力規制委員会の厳正さ・公正さが維持される。
・原子力発電のコストは上積みされ、今までのようなコスト競争力は失うことになる。
・稼働開始40年前後の原子力発電所は、経済的な理由から再稼働の可能性が極めて低い。
・原子力発電所の新設は受け入れ地域の了解が取れず、2020年までの新規稼働の見込みはない。
・中期的に原発ゼロとならないように、新規立地を後押しするための政策が取られる可能性がある。
震災前と比較して
以上を勘案すると、設備容量ベースで2,000万kW(東日本大震災前の約4割)程度の規模の原子力発電所が再稼働し、明確な新設の計画はたたない、と言うのが2020年頃の電子力発電の状態ではないかと思われます。
原子力発電所が順調に稼働した場合、総発電量に占める原子力発電の比率は、東日本大震災前の半分程度の10%強になると想定できます。