■地絡から人命や家屋を守る漏電遮断器
電路の絶縁が劣化すると、電路に触れる物や人体を通して地面に電流が流れてしまいます。これが「地絡」です。地絡は、物を介して起こる漏電と、人体を介して起こる感電とに分けられ、漏電は火災の原因となり、感電は人命を危険にさらすため、地絡が起こったときには瞬時に感知して電気を止める対策が必要です。
屋内配線の地絡を感知して、即座に電路の電気を遮断するのが漏電遮断器(漏電ブレーカ)です。
『漏電遮断器はどんな原理で動作する?』
漏電事故が発生していない普通の状態では漏電遮断器のスイッチ(SW)は閉じています。もし負荷機器に漏電が生じると、漏電遮断器の中にある零相変流器(ZCT)が異常を検出してスイッチを開き、電流をストップします。
零相変流器(ZCT)は、負荷機器が正常に動作していれば(漏電事故が発生していなければ)、ZCT内を貫く電路を往復する電流は同じであり、バランスを保ってZCTの二次コイルには何も変化が現れません。
ところが負荷機器に漏電が生じると、往復する電流に差ができます。そのためZCTの二次コイルに電圧が発生し、この電圧を検知してスイッチ(SW)が開くようなしくみになっているのです。
しかし、漏電遮断器は漏電や感電が起こったことを検知していますから、漏電遮断器が電路を断つまでの間は、物や人体に電流が流れていることになります。
一般家庭で施設される漏電遮断器の動作規格は、感度電流15ミリアンペア、動作時間0.1秒以内と決められています。これくらいの瞬間的な程度なら人体に危険はおよばない範囲とされているのですが、一瞬とはいえビリっとくるのは心配です。そこで、エアコンの室外機や洗濯機、トイレのウォシュレットなど、水気があって人が触れやすい機器では、機器の金属筥体を直接地面に電線でつないで接地を取るようになっています。これなら電気が漏れても人には流れなくなり安全です。
■電気を守る過電流遮断器(配電用遮断器)
電気機器を同時にたくさん使ったり、機器の故障や電線の短絡(ショート)などが起きると、電路に異常な電流が流れて危険です。電線は、その導線の太さに応じて安全に流せる電流の大きさ(許容電流)が決められていて、許容以上の電流を流し続けると発熱して被覆が燃えたり溶断してしまいます。
そこで過大な電流が流れたときに電気を遮断して電路を守る機器が過電流遮断器です。過電流遮断器には、大きな電流が流れると自ら発熱して溶断して切れるヒューズや、過電流を熱(バイメタル方式)や磁力(ソレノイド方式)で検知してスイッチを切る配線用遮断器(安全ブレーカ)と呼ばれる機器があります。
『過電流遮断器の動作規定』
家庭用で使われる過電流遮断器は、その電路の定格電流(電線の太さ)に対して、どのくらいの大きな電流が、どれだけの時間にわたって流れ続けたときに電路を遮断しなくてはいけないかが厳密に規定されています。
最近の家庭では配線用遮断器が主流になったので、個人で勝手に規格を変えることはできませんが、以前はヒューズが使われていたので、交換するのが面倒だといって、規程より大きな電流値のヒューズを取り付けたり、針金を付けたりしている例も見うけられました。
これがどれだけ危険なことだったかは説明するまでもありません。