ドイツにおけるFIT制度
FIT制度を本格的に世界で初めて導入したのはドイツです。
と言っても、最初から今のような制度だったわけではなく、時代と需要に合わせて徐々に形を変えていきました。
制度改革による価格変動
1991年、FIT制度の前身となる「再生可能エネルギーから生産した電力の公共系統への供給に関する法律(電力供給法)」が施行されました。これにより、電力会社は出力5MWまでの小規模発電所の提供する再生可能エネルギー由来の電力(再生可能エネルギー電力)を20年間固定単価で買い取り、送電網に受け入れるよう義務付けられました。ただし、この時の固定単価は、再生可能エネルギー由来の電力については、「水力やバイオガスでは家庭向け電力価格の75%に相当する1kWh当たり13.84ペニヒ(約7円)、風量及び太陽光電力には90%相当の16.61ペニヒ(約8.5円)を通常の卸発電の単価に上乗せして支払う」と言うものでした。この程度ですと、水力発電や沿岸部の風力発電の導入を促すことはできますが、コストの高い太陽光発電の導入を後押しするほどの効果はありませんでした。一方で電力自由化により、家庭向けの電力価格が下落したことも、太陽光の普及拡大を妨げる原因となりました。
電力推進費としての需要家の負担増
2000年になると、「電力供給法」の内容は「再生可能エネルギー優先法(EEG)」へと引き継がれました。
EEGでは、再生可能エネルギーが総電力供給に占める目標値を2020年までに35%、2030年の50%、2040年に65%、2050年に80%とするとともに、電力網運営会社には、再生可能エネルギー発電の事業者が系統接続と発電にかかったコストを賄えるだけの固定的な単価で買い取ることを義務付けました。加えて、再生可能エネルギー電力の単価と火力や原発で発電された電力との単価の差は、再生可能エネルギー電力促進のための賦課金として電気料金に上乗せされる事になりました。
この時、世界で初めて本格的なFIT制度が誕生したのです。
FIT導入後、5年で世界1位へ
FIT制度の開始によって、風力発電などは買取単価が制度以前と比較し下がったものの、太陽光発電の単価は50ユーロ/kWhへと大きく引き上げられました。代わりに、技術開発による太陽光発電のコスト削減のインセンティブを高めるため、固定買取単価を毎年5%ずつ低くすることも決定しました。しかし、実際には2004年の法改正でも買取単価がさほど減額されなかったため、太陽光発電の導入が加速しました。2004年当時、日本は家庭向け太陽光発電システムで世界の先端を走り、導入量も世界のトップを誇っていました。しかし、FIT制度の制定により2005年にはドイツが年間導入量世界1位の座を獲得し、その後も安定した導入量を維持しています。太陽光発電を普及させる、と言う点においてドイツは世界で最も成功した国と言えるでしょう。太陽光発電の国際的なコスト削減にも貢献したため、世界中でドイツのFIT制度を評価する声は依然として大きいのです。
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