■大量の再生可能エネルギーの導入
化石燃料の限界が見えてきて、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出の制限が進むにつれて、サスティナブル(持続可能な)なエネルギーである再生可能エネルギーの導入が注目されています。しかし、再生可能エネルギーの主力である、太陽光発電や風力発電は、気象状況により出力が変動し、電力系統に悪い影響を与える問題があります。
そのため、再生可能エネルギーの導入量を増やすには、スマートグリッドないしスマートコミュニティの技術が必要であると言われています。しかし、なぜスマートグリッドやスマートコミュニティの技術を持ち込めば、再生可能エネルギーが増やせるのか、非常に分かりにくいと思います。なぜなら、この表現は「風が吹けば桶屋が儲かる」というように、途中の因果関係の説明が省略されているのです。
今後、大量の再生可能エネルギーを導入した場合、早かれ遅かれ発電時に過不足となる電気を貯めるメカニズムが必要になります。たとえば、過去の政府目標にあるような2030年時点に系統規模の25%もの太陽奥が導入されれば、改正の昼間には発電の余剰が発生して電気を貯める機能が必要になると想定されています。
また、電気を貯めるような蓄電技術が導入され始めると、必ずいつ充電すていつ放電するのかと言うスケジューリングが必要になり、そのためのスマートなコミュニティの中に設置していかなければなりません。そういう意味で、スマートグリッド/コミュニティの技術が再生可能エネルギーの大量導入時には必要になってくるわけです。
また、再生可能エネルギーの多くは、需要が増えても供給力を増やすことはできません。このため、電力の取引の上でも扱いにくい電源になります。なので、自由に電力を送り出すためにも蓄電技術は重要になってきます。
■交通システムの変革
スマートコミュニティに向けた動きの中で、交通システムにおける第一の主役は、EV(電気自動車)、PHV(プラグインハイブリッド自動車)といった大容量蓄電池を搭載した次世代自動車が挙げられます。これらの普及は、日本では20%、欧米では25~30%を占める運輸部門でのCO2排出量の直接的な削減に貢献します。さらに、現在はその割合が10%以下ですが、経済成長著しく自動車販売数も右肩上がりとなっている、中国やインドと言った新興国でのCO2排出量抑制に貢献しています。
また、直接的なCO2排出量削減効果だけでなく、電力会社の系統安定化や災害時のバックアップ電源としての機能を発揮します。住宅側のHEMSと自動車側のICTシステムをクラウドによって双方向につなげることにより、重電時には太陽光発電の余剰電力やオフピーク時の夜間電力を優先的に充電することや、災害時やピーク時に住宅側に対して電力供給を行うといったことが可能となります。自動車による地産エネルギーの有効利用の形態が一つのスマートコミュニティのパターンであり、日本国内でも豊田市などで社会実証が開始されています。
そして、スマートフォンなどの情報端末がカギとなり、サービスの予約やチケッティング、地図情報や音楽情報配信など、すでに始まっている様々なサービスがこのEVやPHVと連動することで新たな生活シーンが生まれてくることになります。すでに日本では一部実用化されている道路交通管理システムに利用されています。また、EVを個々の所有物ではなくカーシェアでの利用などは中国やフランスなどの海外でも実証が始まっています。さらに、EVバスの運行情報発信、小規模都市での乗り合いEVタクシーなどが計画されているほか、鉄道や航空、船舶業界における予約・発見との連携が進めば、パーク&ライドがよりいっそう身近なものとなってきます。