ついに、2016年4月に電力の小売り全面自由化が開始されます。2016年1月より電力切り替えの事前予約が開始され、2016年3月時点で、東京電力管内に電力提供を開始する東京ガスへの切り替え者が10万人を突破したという状況です。「ゆっくりと」でも「着実に」電力会社の切り替えが進んでいます。
今まで規制部門だった低圧部門の小売り自由化で、一般家庭を含めた低圧ユーザーが電力会社を選べるようになることに関しては、非常に有益であり、今後の電力市場を考慮して見ても、今回の電力自由化は、大きな可能性を秘めた改革だと言えると思います。ただし、今まで一般電気事業者(東京電力や関西電力)と言われる既存電力会社が、安定的に電力を提供していた点も忘れてはいけません。
今回は、様々な新電力が生まれ、多彩な料金プランが登場している中、一般電気事業者にフォーカスしていきたいと思います。
厳しい戦いを強いられる一般電気事業者
電力の小売り全面自由化は、一般電気事業者は守勢側であり非常に厳しい戦いを強いられ、いかに顧客流出を防止するかが大きな焦点と言えます。特に、東日本大震災で福島第一原子力発電所の事故で、現在も損害賠償や復興を行っている東京電力や、全国的に見ても電気料金が高い関西電力などは、一定数の顧客流出は仕方ないとの見方も出ており、実際に2016年3月時点顧客の電力会社切り替えは東京電力・関西電力の地域だけで全体の約8割を占めています。
出典:電力広域的運営推進機関が発表した3月18日時点のスイッチング支援システムの利用状況
また、一般電気事業者にとってライバルは新電力だけではありません。東京電力は中部・関西電力管内への越境販売を発表していますし、中部・関西も東京電力管内への電力供給を発表しています。一般電気事業者にとって、電力自由化は、顧客の流出防止であり、顧客獲得のチャンスでもあります。そのため、「一般電気事業者VS新電力」という構図は想像しやすいですが、「一般電気事業者VS一般電気事業者」という構図も成り立ち、まさに熾烈な競争市場に突入することになります。
新プランや異業種との提携に活路
東京電力をはじめとした、一般電気事業者は2016年に入ってから、積極的に新料金プランを投入し、顧客流出防止に努めています。特に東京電力に関しては、他の一般電気事業者に先駆け新料金プランや異業種とのアライアンスを発表しており、ユーザーメリットが出るようなサービスプランの提供を予定しています。
東京電力が発表した主な新料金プラン
スタンダードS
プレミアムプラン
強みは長年の電力提供に裏付けされたノウハウ
一般電気事業者および新電力をフラットな目で見てみると、やはり一般電気事業者は発電能力や消費者の電力使用量データなど、新電力がなかなか追いつくことができない優位性があります。今後はスマートメーターの導入により、新電力含め、顧客の電気使用量など30分単位でデータ取得できるため、使用量データの見える化などの「webサービス」「使用量に応じた最適なプラン」開発など、顧客満足度を考えると最低限必要になると想定されます。そういった面で言うと、今までの運用データなど、蓄積した情報を持っている電力会社がより優位と考えられます。
克服すべきは営業力
これまで、市場を寡占していた一般電気事業者は、顧客獲得のための営業が不要でした。それが、自由化という競争に変わる市場で、各業種のTOP企業が電力市場に参入してくる中、どう対応していくかが大きな問題点と言えます。もちろんやられっぱなしになるわけにはいけませんし、各アライアンス企業の営業力を借りつつ、最大限の努力を行う上で自社の営業力強化を行い、市場に適応していくことが重要だと言えます。
ユーザーに評価される企業への変貌
電力市場に新たに参入する新電力はもちろんですが、一般電気事業者も新料金プランの発表など、ユーザーに評価される企業へ変貌してきています。今までの一般電気事業者のイメージは、お堅いイメージがありましたが、今後は顧客目線でニーズに適した電気料金を提供する会社に変わっていく、変わっていかなくてはいけないと思います。そういった面も考慮して、電力会社の変更を考えている方は、今一度検討してみてはいかがでしょうか。