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EPRという幻

EPR

2011年の東日本大震災により原子力発電所は危険であるということが再認識されましたが、あくまでもそれは再認識でした。過去にも原子力発電所での大きな事故は多くあり、常に危険と隣り合わせでありながらもその高いエネルギー変換率に、日本を含めた世界中が手を引くことができていませんでした。そんな中、結果的には成功はしませんでしたが、フランスの原子力大手のアレバが開発を進めていて、原子力先進国であるフランスの技術力の結晶として看板になり得た、強靭性と安定性が売りの原子力発電所EPRについて説明したいと思います。

 

EPRの安全面上の特異

EPRは「3.5世代」または「第3世代プラス」と呼ばれる原子炉で、事故で電源を失っても自動的に原子炉が停止する「受動的安全設備」を備えていて、事故でメルトダウンが起きても溶け落ちた核燃料は「コアキャッチャー」と呼ばれる巨大な受け皿に流れ込む仕組みです。またその上部にある貯水タンクは高温になると蓋が自動的に溶けることで弁が開き、それによりコアキャッチャーを水で満たされ、溶け落ちた燃料が冷やされるという仕組みです。

さらに2001年の9月にアメリカで起こった同時多発テロをきっかけに航空機の衝突に耐えられる構造になりました。それによりEPRの建屋の壁は強化コンクリート製で厚みは2メートル以上となり、仮に超大型機が衝突しても壊れない強靭性があります。

EPRの経済的な特異

構想上では出力160万キロワット級となり出力の大型化、高燃焼度による燃料利用率向上によるウラン消費量の低減、従来の原子力発電所の原子炉寿命が40年なのに対して、EPRは約60年、また最大24か月の長い運転サイクルなどによって経済性も大幅に改善されます。

EPRが究極であるが故に

このように究極の原子力発電所として大きな期待で迎えられたEPR、もちろん受注も順調でした。フィンランドとフランスがEPRを受注し、プロジェクトは始まりました。しかし蓋を開けてみれば、最先端であるが故に実際に工事が始まるとトラブル続きになり、フィンランドでは09年に完成予定だったのが18年に、フランスでのプロジェクトでは12年に完成予定だったのが17年になるほどの大幅な工期の延長、また工期の延長などによる総建設費の大幅な上昇などがあり、EPRの開発により、アレバは大きな打撃をうけることになってしまいました。

結果90年代からEPRの開発は進められていますが、未だ1基も完成していないというのが現状なのです。