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「新電力にしたいのだけど、倒産されては困る」「不安だ!」という理由で、新電力への切り替えに二の足を踏んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
安心して下さい。新電力が破産する等によりいきなり事業を停止しても、その分の電力の補給は一般送配電事業者(東京電力や関西電力など地域の電力会社)が行います。
従って、新電力が破産してもいきなり電気が止まることは絶対にありません。
それでは、この記事では、新電力は倒産する可能性はあるのか、また新電力が倒産等した場合にどの様な手続きが必要なのか!?ということについて解説します。
なお、本記事ではこれ以降「倒産」を「経営破たん」として説明します。
新電力が経営破たんしたり、電力事業から撤退する可能性について
電気の供給は暮らしを支えるものですから、簡単に経営破たんしたり、電力事業から撤退するようなことがあっては困ります。そのような可能性は、どれほどのものなのでしょうか。
1.そもそも登録制ですので、事業体制は予めチェックされています
新電力は、勝手に事業を開始できるものではありません。予め経済産業大臣あてに「小売電気事業の登録申請」を行う必要があります。
この申請書により、電力供給体制がきちんと整っているか、組織として問題ないか等が確認されます。
従って新電力各社は、国による事業体制のチェックを受けて登録されていますので、基本的には安心といえます。
なお、経済産業省に登録されている事業者かどうかは、資源エネルギー庁Webサイトの「登録小売電気事業者一覧」にて確認することができます。
2.経営破たんや電力事業からの撤退の可能性は、ゼロではありません
新電力各社は、小売電気事業の登録時点では国によるチェックがされています。従って、基本的には経営は安定しているといえるでしょう。
しかしその後の経営環境の変化により、経営破たんや電力事業から撤退する可能性はゼロではありません。
家庭用電気の自由化がされる前の話ですが、実際に日本ロジテック共同組合やグローバルエナジージャパン(旧・ロハス電力)が経営破たんしています。
とはいえ登録時に国のチェックを受けている以上、このような事態に巻き込まれる可能性は少ないと考えられるでしょう。
新電力が経営破たんした場合や電力事業から撤退する際の対応は?
新電力が経営破たんした場合や電力事業から撤退する際には、経済産業省が作成した「電力の小売営業に関する指針」に従う必要があります。どのようなルールになっているのか、確認していきましょう。
基本ルール
新電力が電力事業を止める際、突然電力供給を停止してしまうと、契約しているご家庭等では電気が使えなくなってしまいます。そのため、以下のルールが定められています。
(1)契約の解除をする15日程度前までに、解除日を明示した解除予告通知を行うこと。
(2)解除予告通知の中には、解除日以降は電気の供給が止まること、一般送配電事業者等へ電力供給を申し込む手段があることを説明すること。
なお一般送配電事業者とは、自由化前の各地域の電力会社の送配電部門のことで、消費者に対する最終的な供給義務があります。また2020年3月末までは、各地域の電力会社の小売部門に最終的な供給義務があります。
従って新電力から契約を打ち切られた場合、消費者から一般送配電事業者(2020年3月末までは各地域電力会社の小売部門)あてに「電気を供給して欲しい」という申し出があった場合、これを受け入れなければなりません。
よって「あたなは一度、新電力会社に切り替えたので、うちとは契約できません!」と言われることは絶対にありません。
(3)事業停止の10日程度前までに、一般送配電事業者に対して託送供給契約の解除の連絡を行うこと。またこの際、小売電気事業者側からの小売供給契約の解除を理由とする旨を明示すること。
これにより、事業停止の10日程度前までには契約のご家庭・一般送配電事業者ともに「あの新電力は電力事業を止める」事実を知ることができ、電力会社の切り替えがスムーズにできることとなります。
2.いきなり事業停止をした場合
会社が破産するような場合、その瞬間から突然事業は止まるものです。事前に従業員の解雇等の手続きを取ることもあるとはいえ、「3-1.基本ルール」に従った対応が行われるケースは少ないのではないでしょうか。
このような場合に備えて、「電力の小売営業に関する指針」では一般送配電事業者に対して以下のことを行うよう規定されています。
(1)事業を停止した新電力の契約者に対して、電気の供給停止を行う5日程度前までに、供給停止日以降は電気の供給が止まることを通知すること。
(2)電気を使い続けるために、一般送配電事業者等へ電力供給を申し込む手段があることを説明すること。
現実的には5日間で他の新電力に切り替えるのは難しいでしょう。ほとんどの方は一般送配電事業者と契約することになると思います。もちろんその後、他の新電力へ契約することは可能です。
繰り返しますが、新電力が破産する等によりいきなり事業を停止しても、その分の電力の補給は一般送配電事業者が行います。従って、新電力が破産してもいきなり電気が止まることはありません。
経営破たんしても、会社は存続する場合
一口に経営破たんといっても、会社更生法や民事再生法など、会社が存続する場合もあります。この場合、事業を続ける場合は今まで通り電気が使えると考えてよいでしょう。
このような事態の場合はニュースで「事実上倒産」と言われることが多いですが、会社が存続するという点で破産とは異なります。そのため、電力事業を続けるのかどうか、よく調べることが大切です。
経営状況の良くない電力会社の見分け方
会社の経営状況を調べる一般的な方法は、決算書を見る方法があります。しかし決算書を読むには企業会計に関するある程度の知識が必要であり、一般市民には敷居の高い方法かもしれません。
上場企業の場合は会社四季報を見るのも一つの方法です。数字を読めることが理想ですが、最近の企業動向も簡潔に記されていますので、ここを読むのも一つの目安となるでしょう。
また、私たちの電気料金に賦課された再生可能エネルギー賦課金を、所定の組織にきちんと納付しているかどうかを確認する方法もあります。払うべきものを払えていないということは、経営がうまくいっていないことを示す一つの指標となりえます。
実際に新電力からの納付がない事例もあり、この場合は経済産業省のニュースリリース等で掲載されます。
まとめ~電力会社に万が一のことがあっても、電気が使えるような仕組みがあります~
ここまで、新電力の経営破たんがあった場合に電気が使えるのかどうか?ということについて、説明しました。
電気は生活の最も基本的なインフラの一つですから、経営破たんなどの企業の都合で突然止まるようなことにならないような仕組みになっています。
新電力が事業を停止し、今まで通り電気が使えなくなる場合は事前に必ず通知が来ます。
その際に大切なことは以下の通りです。
(1)書かれている内容をよく理解すること
(2)疑問点があれば、新電力や一般送配電事業者等に確認すること
(3)電力会社の変更手続きを間違いなく行うこと(とりあえずは、一般送配電事業者や、地域の電力会社の小売部門に変更するケースが多いと思います)
実際に新電力各社が経営破たんしたり、事業停止したりするケースは少ないでしょう。そのため、ご自身で電力会社の乗り換えを行うまでは無事に電気を使い続けられる人が圧倒的だと思います。
また万が一の場合の規定もありますから、経営破たんを過度に不安に思う必要はありません。安心して、あなたに合った電力会社を選んでいただければと思います。
参考:
資源エネルギー庁「小売電気事業の登録申請受付について」
福岡県民新聞「グローバルエナジージャパン~計画倒産か?」
経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会「小売全面自由化に関するQ&A (消費者向け)」
経済産業省「「電力の小売営業に関する指針」を改訂しました」
スマートジャパン「動き出す電力システム改革(19):発電と小売をつなぐ「一般送配電事業者」、需給調整能力に課題が残る」:
経済産業省「再生可能エネルギー特別措置法に基づき、納付金を納付しない電気事業者を公表します」
環境ビジネスオンライン「経産省、再エネ賦課金が未納の電気事業者を公表 日本ロジテックとは資本関係なし」