鉄塔と電柱その1
鉄塔の形を観察してみよう
送電する電圧が6万6千ボルト以上の送電線には、ふつう鉄塔が使われますが、鉄塔にもいろいろな種類があります。
なかでも鉄塔を真上から見たとき正方形をしている四角鉄塔と呼ばれる塔がいちばん多く、垂直形電線配列といって、
三相交流の送電線3本を垂直方向に並べて、左右に2回線分か取り付けられているのが特徴です。
また、1回線の送電線だけを支える場合には、真上から見ると長方形に見える方形鉄塔を用いることが多いですし、
鉄道の線路や道路などの上を通過する場合は、門形鉄塔が使われます。
さらに鉄塔の中から上を広げた形状のえぼし形鉄塔は、山岳地帯の1回線鉄塔としてよく使われます。
鉄塔はふだんよく目にする機会が多いので、じっくり観察してみましょう。
鉄塔の設計
なお鉄塔を設計する場合には、鉄塔やがいしにどのくらいの荷重が加わるのか、またどの程度の風圧を受けるのか、
そして送電線の鉄塔に対する引張力がどのくらいあるのかを考慮しておかなくてはなりません。
たとえば、鉄塔はその片面につき1平方メートルあたり約200キログラム程度の風圧荷重を受けることを想定して設計され、
鉄塔の地面ぎわの開き幅と地上高さの比は、5から8くらいになっています。
鉄塔はすべての電圧の送電に使用できますが、低電圧で細い電線の場合には経済的ではなく、
一般に6万ボルト以下の需要家までの電線には木柱や鉄筋コンクリート柱のいわゆる電柱が用いられます。
木柱は、杉材などにクレオソート、硫酸銅などを注入して使われますが、寿命は15年~18年です。鉄筋コンクリート柱は、形状、
寸法などが任意に設計できて、根開きが小さく、寿命は半永久的でさびることもありませんが、位置変更や撤去がほとんど不可能で、地震などで倒壊しやすい、運搬が困難という弱点があります。
日本で初めての送電は、1899年(明治32年)山梨県駒橋発電所でした。
駒橋発電所からの送電路には木柱が使われたのですが、鉄塔が本格的に送電線路に採用されたのは、箱根の塔之沢線です。
箱根水力電気会社により1909年(明治42年)塔之沢発電所(3,300kW)と保土ヶ谷発電所間58kmの距離に建設された送電線路において、途中16kmの区間で、鉄塔1,661基が使われました。
これがわが国で初めて立てられた鉄塔です。いまでもこの中の1基が、川崎にある東京電力の電気の資料館に展示されています。
その2へ続きます