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電力自由化の今後の見解 2

完全自由化の行方

電力システム改革委員会が提示した改革案がどれだけ実現できるかは、今後のエネルギービジネスに大きな影響を及ぼします。

電力システム改革の法案には「目途とする」「目指す」と、改革の行方をあいまいにする言葉が頻出しています。

そこで、自民党の電力派が力を増せば、法律が骨抜きになるリスクは確かにあります。

しかし、法律の行方にだけ固執すると市場の行方を見失ってしまいます。

 

例えば、発送電分離について法的分離の実現に過剰にこだわるのは危険です。

発送電の意義とは、「送電線への再生可能エネルギーや分散型エネルギーの接続が容易になる事」「送電線利用のコストが透明になる事」なのです。

法的分離が実現しなければ、これらが達成されないわけではありませんし、法的分離になったからと言って保証されるわけでもありません。

自由化の本質は分離の形ではなく、「どれだけフェアな競争市場が出来るかどうか」にあります。

送配電線を公平に使えるようにすることはそのための条件であり、発送電分離はそのための手段です。

1つの手段だけに固執するのではなく、複数の視点から本来の目的が達成されるかどうかを見抜かなくてはなりません。

 

その意味では、今回の電力システム改革案にはほかにも重要な要素が含まれています。

送電線の広域運用が実現し、それなりの透明さで運営されれば、再生可能エネルギーの接続は今よりはるかに容易になり電力会社の既存の領域を超えた競争も現実味を増してきます。

また、家庭向けの電力供給を含む電力小売りの全面自由化が達成されれば、電力会社は主要な収益基盤を失ってしまいますので、競争上PPSが有利になるケースも増えます。

電力システム改革がよほど骨抜きにならなければ、系統の広域運用と全面自由化は2020年までに実現している可能性が高いでしょう。それが市場での競争をより活発にし、形としての発送電分離が後からついてくることもありえます。

 

東電改革の影響

電力市場改革のもう1つのカギとなるのが東電改革ですが、こちらは自由化より速いスピードで進むのではないでしょうか。

特別事業改革にかかれているように、福島第一原子力発電所の事故対応によって、一層踏み込んだ改革が計画される可能性もあります。

どちらにせよ2020年までに計画は何度か書き換えられることとなるでしょう。

 

技術開発

その他に電力システム改革を左右する要素として重要なのが、『技術革新』です。

電力システムの進歩を支えたのは技術の進歩です。

水力・火力・原子力と大型化をひた走った発電技術と巨大な発電所から広大なエリアに電気をおくる送配電技術は、社会・経済の発展に大きく貢献しました。こうした技術開発がなく、電力会社の発電所の規模が数千kWレベルにとどまっていたら、日本の経済・産業が今ほど発展することはなかったはずです。

しかし、これらはテレビでいえばアナログ技術が究極に発展したのと同様であり、特定の技術系統の中での発展に過ぎません。

アナログからデジタルへ発展したように、エネルギーの世界でも技術系統の転換が起ころうとしているのです。

 ダウンサイジングの流れ

例えば、エネルギー分野での技術のダウンサイジングです。

昨今起こっているダウンサイジングとは、以下の3つの技術的な進歩が融合した歴史的かつ革新的なトレンドであると言えます。

1つ目は、精密加工技術・素材技術・新技術などの発達により小型高性能の製品が可能となった事です。

2つ目は、小型高性能の機器を数多く生産することで、画期的なコストダウンと信頼性の実現を可能とした生産技術の革新です。

そして、3つ目は、ITの飛躍的な進歩により小型高性能の機器を数多く組み合わせたシステムを、安定して運転できるようになった、と言うことです。

1つ目、2つ目の要素も高度な制御技術により可能となったことを考えると、ダウンサイジングはインターネットを含むITを背景とした普遍的な流れとも言えます。