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電力市場で覇権争い勃発 ソフトバンクと楽天

どうなる電力自由化

ソフトバンクと楽天が注目を集めている

2016年4月に始まった電力小売事業の完全自由化。自由化後は東京電力をはじめとする大手電力会社(一般電気事業者)、新電力(特定規模電気事業者:PPS)など制度上の事業区分はなくなり、全事業者が対等な条件で競争することになる。その対象となる一般家庭、商店など50kW以下の小規模電力契約者数は約8400万件で、市場規模は7.5兆円に上る。それだけではなく、完全自由化後に需要が活性化すると期待されている小規模電力消費者の電力データを活用した各種新サービス、電力消費を最適化するHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)、蓄電池、家庭用燃料電池などを含めた電力関連の市場規模は20兆円を超えるとの予測もされている。この巨大市場をめがけた動きが昨年夏頃から活発化。そうした中、ソフトバンクと楽天が水面下で火花を散らし、エネルギー関係者の注目を集めている。

新電力の覇権を目指すソフトバンク

営業運転を12月に開始

メガソーラー事業を全国展開しているソフトバンク子会社のSBエナジーは昨年12月26日、出力規模約2.4メガワットの「ソフトバンク紋別ソーラーパーク」の営業運転を開始した。同社14カ所目のメガソーラーで、同社は今年も4カ所のメガソーラー営業運転開始を予定している。同社が11年10月の会社設立以来、まるで事業を一本に絞ったかのように全国各地でメガソーラー拡大を急いでいるのは、単に発電所数を増やすのが目的ではない。エネルギー業界関係者は「バランシンググループ(代表契約者制度)の規模拡大が目的だ」と指摘する。バランシンググループとは、複数の新電力会社と大手電力会社が一つの託送供給契約(新電力が大手電力の送配電網を利用して自社顧客に電力を供給する契約)を結ぶ、複数新電力の代表契約者のこと。発電所で発電した大容量電力はためておくことができないので、時々刻々と変動する需要量(消費量)に合わせ供給量(発電量)を一致させ続ける必要がある。一時的であっても電力の需給バランスが崩れると送電網の電圧が乱れ、停電を引き起こす危険性があるためだ。このため電気事業法では大手電力に需給を一致させる「同時同量」を義務付けている。そこで大手電力会社は需要予測に応じてどの発電所を運転し、どの発電所を休止するかなどの発電計画を立て、当日の需要変化を見ながら発電所の運転/休止、出力増加/減少などを細かく調整し、同時同量を達成している。これに対して電気事業法が新電力会社に義務付けているのが「30分同時同量」だ。大手電力のように常時ではなく、一時的に需給バランスが崩れても、30分単位の総量で同時同量を達成すればよいことになっている。

電力自由化の覇権を目指す楽天

部分供給制度

インバランス料金の最小化を図る手法がもう1つある。「部分供給制度」だ。これは一電力消費者に対し、新電力会社と大手電力会社が個別に電力を供給する制度のこと。同制度も前述の電力小売事業一部自由化に伴い、経産省と公正取引委員会が共同で策定した「適正な電力取引についての指針」(1999年12月公表、11年9月最新版に改訂)により導入された。同制度に基づく契約内容を「基本消費量を新電力会社から、変動消費量を大手電力会社から購入」とすれば、新電力会社にとっては需要予測外れのリスクを減らせるメリットがあった。ところが消費者側は新電力会社、大手電力会社など複数の電力会社と個別契約しなければならず、事務手続きやそのコストが増えるなどもあり、同制度採用例は2件しかなかった。この欠点を補うため、電力卸取引のエナリスが考案したのが「部分供給制度」と「電力代理購入サービス契約」(消費者に代わり複数の電力会社から電力購入を請け負うサービス)の組み合わせによる「電力供給ワンストップサービス」といわれている。これに着目したのが楽天だ。同社はまず13年6月にエネルギーサービス、楽天エナジーを立ち上げ、同年12月に楽天エナジーの新サービスとして「電力マネジメントサービス」を開始、電力事業に本格参入した。同サービスは楽天エナジーが消費者の電力代理購入契約者となり、「部分供給制度による電力調達、電気料金最適化、契約を一括代行する」というもの。