概要
1995年以降、4次にわたり行われた電力制度の改革を契機に進みつつある、小売全面自由化を始め、地域独占や料金認可制の撤廃、発電事業者のライセンス制への移行などを含む電力供給体制の改革。
略歴
日本の電力供給体制は戦後、電力会社による垂直一貫体制と、総括原価方式による投資回収の保証という制度によって維持されてきました。垂直一貫体制は、ひとつの電力会社が発電から送配電、需要家への電力販売までを一貫して行う体制で、電力会社は地域に一社という形で地域独占が認められてきました。また、総括原価方式は、電力料金の算定に当たって、設備、燃料コストや人件費等すべての経費を原価として算定し、一定の利益を認めた形で料金をはじく方式です。いわゆる、国による料金認可制です。そうした仕組みによって、日本では、需要家に品質の良い電気を、安定して供給できるという体制が維持されてきました。
垂直一貫体制や総括原価方式、さらに地域独占という体制は、戦後、日本の経済発展を電力供給によって支えるという政府の基本的な使命があったからです。そのため、戦後の経済復興から、高度経済成長を経て、今日の安定的な経済発展が実現したということができます。
しかし、そうした経済発展の半面、日本の電気料金は国際的に見て割高との批判が強まる一方、産業界などから、電力の自由化を進め、電力供給や販売に競争原理を認めるべきだとの議論が高まりました。そのため国は、1995年以降、4次にわたる電力制度改革を行い、発電部門において競争原理を導入する一方、小売部門の一部自由化を実施してきました。
こうした改革により、大口需要については、小売電力事業者の選択や自由な料金設定が実現するとともに、再生可能エネルギー事業者の参入など、発電事業者の多様化が一定程度進展しました。しかし、そうした一連の改革を経ても市場の大きな構造に変化は見られませんでした。そこへ2011年3月の東日本大震災とそれによる原子力発電所事故が発生し、日本の電力需給は一気にひっ迫し、全国的に広範囲な電力融通が求められました.それを契機に、電力システム改革が急速に具体化へと進んだのです。
電力システム改革は、現在具体化が進んでいる小売全面自由化を始め、地域独占や料金認可制の撤廃、発電事業者のライセンス制への移行などが実現しつつあります。今後、2018年から2020年を目途に実施される送配電部門の法的分離によって、電力自由化は総仕上げを迎えます。