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欧州の電力自由化の道筋

欧州での自由化

ヨーロッパでは着実に電力販売の自由化が進んでいます。

電力市場に競争環境が整備され、電力の小売り事業だけでなく、トレーディング(電力取引)ビジネス、電力インフラ(発電、送電などの資産整備)ビジネス、アンシラリーサービス(最終電力供給と言う補完的サービス)ビジネス、電力を比較しユーザに最適なものを選択する電力購入支援サービスなど、数多くのビジネスチャンスが生まれました。

自由化が始まった直後の2000年前後、日本でも同じような市場の立ち上がりが期待されましたが、すべて一時的な盛り上がりで終わってしまいました。

結果として、日本の自由化は欧州に比べて10年以上遅れることとなりました。

海外の自由化で注目すべきなのは、新規参入事業者が促進されたり、新たなビジネスが生まれただけでなく、電力会社同士の競争を重視したことにあります。

EUでは、「自由な市場を実現するためには、まず、地域ごとの独占的企業の間で競争を起こすことが大切である」との理解から、市場を国や地域で閉じずに、「独占企業同士を競争させてEU全体の市場を創ろう」という発想がありました。

そのために、市場の門戸は外国企業にも開かれました。ここは、電力会社同士の競争がほとんどなく、外資参入が妨げられている日本との大きな違いです。

欧州の自由化に学ぶ

ドイツでは、8大電力会社に加え、地域の自治体公益事業会社(シュタットベルケ)が小売市場で独占的な力を持っていましたが、企業間の競争を推奨するEUの理念によって電力料金は徐々に安価になってきました。

イギリスでは、まず12に分かれていた国の地区配電局が株式会社化され、相互の地区に参入できる環境が整えられた上で、新規参入が認められました。

発電事業の競争を重視したのも欧州の自由化の特徴になります。

電力の小売りを手掛ける会社が等しい条件で電力を調達できるように発電と小売りを可能な限り分離する、独占的な発電会社を複数に分割する、などにより競争を促しました。

イギリスは、国営中央発電局と地区配電局を株式会社化する際に、発電事業と小売り事業を分離しました。

その結果、国営中央発電局は、電子力発電を専門にするニュークリア・エレクトリック、ナショナルパワー、パワージェンの3社へ分割されました。

その結果、イギリスの発電市場では、これら3社に加え、英国核燃料公社(BNFL)、マグノレックス・エレクトリック、スコットランドの電力局を株式会社化したスコティッシュパワー、スコティッシュ・ニュークリア、スコティッシュ・ハイドロニュークリア、また、配電会社であったイースタン、新規参入のIPP(独立発電事業者)、さらにはフランスのEDFの間で競争が繰り広げられることとなりました。

一方、フランスでは、国営電力会社EDFの発電力が強大すぎて小売り分野の競争が不十分な状態にとどまっていると言われています。

ここから、自由な市場を立ち上げるためには、既存発電事業を分割してでも競争環境を作ろうとする政策姿勢が重要だと言うことが読み取れます。

送配電コストの統一

欧州の自由化政策のもう一つの特徴は、電力を運ぶための送配電コストを市場全体で同一にしたことです。

自由化によって統合された市場で電力を発電所から需要家に送るためには、広い地域の送配電網を利用しなくてはなりません。

そこで競争が起こるためには、どの小売り会社にとっても送配電コストが等しくならなければいけません。

そのために、欧米の自由化では、発電部門と送電部門を分離し、すべての発電事業者に対して送配電網を中立の立場におきました。

以上のような政策と車の車輪となるのが全面自由化(すべての需要家への電力の販売を自由化の対象とする)です。

欧州では、小国を除き2007年までに全面自由化が実現されています。

全面自由化にこだわったのは、一部の市場が規制されたままでは、規制された市場で利益を得つつ、競争市場で戦うことが出来る既存事業者が有利になるのは当然だからです。