再生可能エネルギーの現状
再生可能エネルギー全体としてみると、世界的にはいまだに風力発電が主流となっています。
kWh単価が圧倒的に低いからです。
メガソーラーでもドイツや中国などで買取単価が20円/kWhを切るなどコスト低減は進んでいますが、風力発電は条件によってはすでに10円/kWhを切り、LNG火力発電にも対抗しうるところまで来ています。
製作コストの最適配分を考えるなら、再生可能エネルギー発電の導入が遅れている日本で太陽光発電に投資が集中するのは合理的とは言えません。
FIT制度は運用によっては特定の発電手段でバブルをもたらすことが出来ます。市場が暴走しないようにコントロールする手段をドイツの事例から学ぶ必要があるでしょう。
日本のFIT制度の優位性
一方、例えば一般産業廃棄物の発電利用において、日本は他国に優位性を持っていると言えるでしょう。
こうした強みをもっと伸ばす事が出来れば、新興市場などで日本の競争力となるでしょう。
新興国では、都市の建設ラッシュや経済成長でどこでも産業廃棄物の処理方法が問題となっています。
日本では、分別や収集を含めた廃棄物処理の高度な取組が進んでいるので、制度設計、産業物処理プラントや発電技術、収集システムなどをセットで提供できれば大きな強みとなるのではないでしょうか。
FIT制度で産業育成を重視するのであれば、世界での優位性を考えた産業政策がもっと考慮されてもいいでしょう。
FITの今後
FIT制度で一度設定された買取単価は、定められた期間(20年間)継続されます。
しかし、新設の再生可能エネルギー発電の買取単価については、毎年見直されることとなっています。
2013年3月12日、調達価格等算定委員会は買い取り額について、太陽光発電のみ1kWh当たり42円から37.8=38円に引き下げる案を提示しました。
これは、太陽光発電システムの市場価格に対する現在の買取価格の高さを認めたことの表れだといえましょう。
また、買取価格が低減するだけでなく、太陽光発電に対するFIT制度そのものが数年程度しか存続しないだろうと言う声も多く上がっています。
ドイツでは、太陽光発電に偏ったFIT制度への批判が大きく、52GW普及した段階で制度を廃止する事が定められました。
再生可能エネルギー発電の普及に大きく貢献したことは間違いありませんが、合理的な再生可能エネルギー導入を図ったドイツですら、FIT制度の寿命は10年強しかありませんでした。
風力発電の積極的な導入を怠り、太陽光発電に法外な単価を設定する、と言う不合理なアプローチをとった日本のFIT制度は、はるかに短命に終わる可能性は非常に高いでしょう。