発電事業は典型的な設備産業です。
10年以上の長期にわたり運営することで初めて投資回収が可能となります。
FITのもたらした効果
それに加え、太陽光発電はコストが高い事から発電手段としては敬遠されてきました。
それにも関わらず、発電手段としてこれだけの偏りを見せたのは、設定された買取価格が海外市場の相場と比較し高額となっているからでしょう。
このようなギャップが生じたのは、太陽光発電システムのコスト想定に抜けがあったからではないでしょうか。
買取単価の設定には、発電事業者や日本のメーカーなどの意見が参考にされましたが、日本の太陽光発電市場は、一般家庭向けの1kW当たりの発電システム単価が50万円弱と言う価格が主流でした。
これに対し、世界の太陽光発電の低コスト競争を引っ張っているのはメガソーラーです。
日本メーカーも欧州向けなどでこの市場に参入していますが、安価なものでは単価が10万円/kW台に突入しています。
国内産業振興の優先
一方、FIT制度の大義は国内産業の振興です。
世界シェアが下がったとはいえ、日本の再生可能エネルギーの中では太陽光発電が最も競争力があるため、国内産業振興の大義が優先されたと考えられます。
そのため、土地の値段や系統接続コストが高い、という日本特有の事情も考慮すべき、と言う主張も受け入れられたのでしょう。
しかし、事業収益を追い求めるのは発電事業者とからして見れば当然ですので、システム調達の際に頭にあるのは海外の一般的な価格のはずです。
それが調達価格等算定委員会の想定よりも低ければ高水準の投資利回りが確保されます。
それが導入の容易さとあいまって、太陽光発電への集中的な投資を後押ししたのでしょう。
需要家に降り注ぐ負担
FIT制度の高い買取単価を支えるのは電力需要家です。
本来のコストよりも高いコストで普及すれば、結果として必要以上のコストを電力需要家が支払う事になります。
加えて、買取単価が高ければ、需要が増えて売り手市場となりコストが高止まりし、大量普及によりコスト低減を図ると言うFIT制度の趣旨とは相いれない状況に陥る可能性もあります。