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原子力発電維持の妥当性

今後、どのように原子力発電を維持していくかはまだ明確になっていません。

大惨事となった福島第一原子力発電所の事故ですが、もし東京電力ほどの体力や人材を持たない電力会社の保有する原子力発電所で同様の事故が起きた場合、より深刻な問題に至るのではないか、と言う事が懸念されます。

原子力発電の高コスト化

一方で、原子力発電の安全基準は、設計だけでなく運営や事故時と対策についても整備されていくでしょう。

そうなると、規模の小さな電力会社が原子力発電所を運営することの経済的な負担は相当大きいと思われます。

安全基準の強化と立地地域との調整負担が大きくなるのは避けられません。

大手電力会社であっても、経済的な理由から、原子力発電に投資する意欲を失う可能性があります。

 

これまで、電力会社が原子力発電を推進してきた背景には、地域での独占的な権利を委ねられ、国策と一体と言う意識下で電力事業を担ってきた事、各地域での供給義務を負ってきた事などがあります。

その中では、必ずしも経済的に合理的ではないように思われる施策も選択されたでしょう。

しかし、今般進められようとしている電力システム改革が実現すれば、電力会社は供給義務から解放され、電力会社だからと言って特別視される傾向も薄まります。

結果として、電力会社も普通の企業と同様に、経済的に合理的な選択をしていく事になるでしょう。原子力発電は、事業者側から見ても推進のモチベーションが落ちる可能性があります。

懸念される人材不足

また、人材確保の問題について、原子力発電の人材を継続的に確保していく事が重要である理由は2つあります。

技術の継承

1つは、技術の継承です。データベースや設計図だけあれば済むと言う話ではなく、技術の継承のためには、技術者が途切れることなく確保、育成される事が必要になります。

 

安全性の確保

もう1つは、原子力発電の安全性を維持するためです。

いかに厳格な安全基準を作ったとしても、原子力発電を熟知した技術者がいなければ、原子力発電を安全に管理することはできません。

また、あらゆる規模の事故を想定するのなら、その技術者は運営維持管理だけでなく、設備の設計、つまり新設の経験もあったほうがいいでしょう。

福島原発事故の人材獲得への影響

福島第一原子力発電所の事故以来、日本で原子力発電の技術者を志す若者が激減しているとのことです。

国内の原子力発電事業は縮小が免れず、海外事業の拡大についても成長路線を維持するのは容易ではありません。

つまり、学生から見て、原子力発電の分野は今後大きな成長が見込めない事業となっているのです。

こうした状況下で、に優秀な人材を確保するかが問われることになります。

考えられる解決策

以上述べた課題を解決する1つの方法として、国営または国が資本投入した特別な会社による原子力発電事業の運営と言うのがあります。

そこでは、厳格な安全基準により運営コストが上昇しても、国策として原子力発電を推進することが出来ます。

国営や国が出資した会社と言うものは、コストアップしがちな傾向がありますが、そのリスクは第三者による経営監視と厳格な調達管理によって低減を図る事が出来るでしょう。

後者については、この10数年、公共事業などで多くの知見を培っていますので、原子力発電でも応用できるのではないでしょうか。

また、人材の確保についても、民間事業としての魅力が少なくとも、国家事業としての重要性を訴えれば、魅力を感じる若者もいる事でしょう。

 

しかしながら、日本にとって、あれだけの事故を起こした原子力発電を維持するのには相当の労力を必要とする事に変わりはありません。