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再生可能エネルギーの今後

節電

日本の再生可能エネルギーの今後を左右する8つのポイント

①FIT制度の高単価がいつまで続くのか
②FIT制度がどのように運用されるか
③再エネの系統接続条件が緩和されるか
④地産地消の促進策が強化されるか
⑤技術革新がどれだけ進むか
⑥化石燃料の価格がどのように推移するか
⑦温暖化対策がどれだけ強化されるか

①については、太陽光発電、特にメガソーラーの単価と他の再エネを分けて考えないといけません。メガソーラーについては既に10%程度の単価削減の方向性が打ち出されています。
ドイツの例を見ても分かるように、投資効率の悪い太陽光発電への投資が突出すると、需要家の負担問題が顕在化することになります。この方向は今後も続くことが予想されます。
メガソーラーについては年度を追うにしたがって投資採算性が低下し、2・3年の間に今のような投資のうまみは無くなると考えられます。
一方で、ほかの再生可能エネルギーについては、投資額が小さく、制度の目的を達成しておらず、需要家の負担にもなっている事から、少なくともFIT制度が続く間は大きな単価の下落はないと考えられます。

そのうえで考えなくてはならないのが、②の今後のFIT制度の運用の方向性についてです。太陽光発電向けのFIT制度は数年以内に終了する、と言う見方もあるように、再生可能エネルギー全体にこのような方針が適用されると、日本の再生可能エネルギー促進政策は、従来の補助金やRPS制度に戻ってしまう事になります。
それでは、従来の制度に甘んじたことが他先進国に比べて再エネの普及が遅れる原因となった、と言う認識と矛盾してしまう可能性があります。
こうした理解と専門家の評価を合わせると、日本のFIT制度はメガソーラーバブルを修正して、継続されると考えるのが妥当と言えます。
それは、経済性を重視して再生可能エネルギーを導入してきたドイツの取り組みとも共通します。

メガソーラーに偏った制度を修正する際に重要となるのは、ドイツなどの実績から考えて、風力発電とバイオエネルギーの普及をいかに加速させるか、と言う事です。
そこで、風力発電の普及を止めている③系統接続条件の緩和、とバイオエネルギーの自家利用、コジェネ利用のための条件整備④、が必要となります。
前者が実現するかどうかは自由化がどこまで進むかがカギとなり、後者については自家利用が何らかのメリットを享受することができない現在のFIT制度自体の修正が必要になります。

FIT制度による過度の支援なしに太陽光発電が普及するためには、発電効率の向上、コストの低下、あるいはエネルギーマネジメントシステムや蓄電池の性能向上、といった技術革新⑤が欠かせません。
また、燃料電池の技術が向上すればバイオ燃料の普及を後押しすることもできます。再エネでは、FIT制度に注目が集まりがちですが、技術革新の重要性を改めて認識する必要があります。FIT制度も本来は、技術革新がなされるまでの過渡的な制度なのです。

以上は再エネ普及の内的条件と言える観点ですが、再エネの普及には外的な条件がカギを握る面が多く存在します。
1つは、⑥化石燃料価格です。最近、シェールガスの開発により化石燃料価格について楽観的な見方も出てきていますが、中国などの経済成長を考えると、中期的には化石燃料の価格は右肩上がりにあります。
リーマン・ショック以降の世界同時不況の中でさえ、石油価格は1バレル100ドル前後で推移してきました。また、中国がPM2.5の問題を改善するために石炭火力を天然ガス火力に変えようとしたら、大変な天然ガス需要が生まれる、などの景気以外の要因もあります。再エネのコストダウンの流れと、化石燃料の価格の上昇が合わさると、10年程度の間に再エネのコスト競争力が相当向上する可能性もあります。

再エネの普及のために依然として期待したいのは、気候変動対策のための二酸化炭素削減の動きです。しかし、日本は京都議定書の延長に参加しないことを決めたうえ、ポスト京都に向けた世界的な動きも先が見えない状況にあります。国内では、2020年までに「1990年対比25%二酸化炭素を削減する」との目標が修正されます。
これらの動きは、「日本では二酸化炭素削減のための取り組みが自主的な目標の下に行われる」と言う事を意味しています。

以上を踏まえると、日本版FIT制度により注目が集まっている再エネ市場ですが、短期的な盛り上がりに終わる可能性は少なくありません。そうなった場合、再エネ導入を促すのは、技術革新、規制緩和、補助制度と言う従来的な取り組みに戻る事も大いに考えられます。ドイツなどの経験に学んだうえで、技術開発と言う日本の強みを生かした枠づくりが重要になってくると言えるでしょう。