国営の電力企業が発電から送電・配電までを一括して独占している国の多いアジア。
その中で、韓国では2000年代前半から電力改革が進められてきました。
しかし、日本と同じように電力小売の自由化を実施したわけではありませんでした。
発電部門の自由化
韓国の電力を一手に引き受けていた韓国電力公社(KEPCO)は元々国営企業でしたが、1989年に株式公開され、(51%の株は政府保有ですが)民営企業としての道を歩み始めました。
その後規制緩和の波が電力業界にも押し寄せ、90年代後半には電力自由化に関して活発に議論されました。
そして、2001年に発電部門の新規参入を認める法律が公布されました。
その結果、KEPCOの発電部門は分社化され新規参入も可能となりました。
同時に、卸電力取引所も開設され、発電事業に関しての自由化は完了しました。
度重なる値上げ
発電部門での自由化が行われ、競争原理が働いたことなどにより電力の卸価格は下落しました。
しかし、その値下げも長く続きませんでした。
2005年ごろからは燃料の高騰により発電コストが大幅に上昇し、卸価格も上昇しました。
基本的に小売はKEPCOが独占している韓国では、一般需要家が支払う電気料金は国から定められた変動しない価格となっています。
つまり、卸価格が変動しても小売価格は変えられないのです。
このシステムによって、高騰した発電価格と変動できない小売価格の間に挟まれたKEPCOは赤字を計上し続けました。
問題点
発電事業のみを自由化した韓国ですが、発電事業はそもそも新規参入するハードルが高いので参入は活発になりませんでした。
自由化されて10年以上経過する今でも新規参入事業者が供給する電量の割合は1割以下になっています。
また、小売市場を自由化しなかったことも問題点と言えるでしょう。
これは小売市場を独占したいKEPCOの反発によって実現しませんでした。
現在、赤字を計上し続けているKEPCOは小売価格を変動させることのできる制度を導入しようとしています。
将来的には、小売価格も卸価格に合わせて上昇してしまいそうです。
韓国の電力自由化は中途半端で自由化によるメリットを最大化できていない印象を受けます。
日本は自由化の幅がもう少し広いので韓国と全く同じ状況にはならないでしょう。
規制と緩和のバランスをきちんと保たないと不自然な市場が形成されてしまう危険性があるようですね。