カリフォルニアでは電力自由化が行われた後、停電が多発し、「電力危機」とまで言われました。
では、なぜそのような事態が発生したのでしょうか、また同じことが日本で起こる可能性はないのでしょうか
カリフォルニアの電力自由化
アメリカ全土での電力自由化の流れに合わせて1998年にカリフォルニアでも電力自由化が実施されました。
しかし、カリフォルニアの電力自由化は少しイレギュラーなやり方で行われました。
発電事業は自由化して、送配電は自由化しないというものでした。
そのため、これまで電気の小売を独占していた電力会社は発電施設の売却を急ぎました。健全な競争が行われるなら、これにより発電所がお互いにコスト削減を実践して電力小売価格は下落し、電力会社が儲かる計算でした。
卸売価格は株取引のようにリアルタイムで価格が決められるシステムを導入しました。ちなみに、送配電は自由化されていなかったので、一般消費者が利用する電気代は州によって定められた価格が適用されていました。
エンロンによるカリフォルニアの電力の価格操作
電力自由化に伴い、電力会社が売却した発電設備の大半はエンロンによって買収されました。
エンロンは送配電を担う電力会社に対する卸売価格の引き上げをもくろみました。
具体的には、点検や修理の名目で多くの発電所の操業を停止し、発電量を減らして販売価格を引き上げました。
これにより電気の卸売価格は8倍以上になったにも関わらず、小売販売価格は相変わらず州が定める価格が遵守されていました。
消費者としては保護されていて良かったのですが、電力会社は電気を売るごとに赤字を計上する状況になりました。
これにより、大手の電力会社は相次いで倒産していきました。
卸電力の供給量はエンロンによって絞られ、送配電を担う電力会社が倒産し、カリフォルニアの電力は危機的な状況となりました。
州知事への不信感が募り州知事は解任されました。
日本でカリフォルニアと同じことが起きる可能性
日本では、発電だけでなく配電も自由化されます。
したがって、仮に発電価格が急に上昇するとその上昇に合わせて小売価格も上昇します。
なので、カリフォルニアのように発電をする企業だけが儲かるようなシステムを作り上げることはできません。
カリフォルニアは悪意を持った事業者が電力市場に参入すると大変なことになるという先例です。日本で全く同じようなことはシステム上起こらないはずですが、悪意を持った事業者が参入する可能性は十分に考えられます。日本政府によるライセンス制の導入も検討されていますが、消費者自身が事業者を正しく選ぶことが必要となってくるでしょう。