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HEMSという言葉とご存知ですか?
HEMS(「Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)、ヘムスと読む」とは、家庭で使用する電気を管理する仕組みの総称です。
一般家庭向けへの新電力販売が始まってから、「電気の見える化」を推進していますが、それを国主導で2030年までに全世帯に普及拡大するものです。
電力の見える化で節電促進
「電気の見える化」と言うのは、パソコンやスマートフォン等のIT機器を活用して、リアルタイムに電気の使用量を誰でも簡単に把握する事です。今までは電気料金明細書に金額と共に「電気使用量○○○kwh」と1か月間の合計量しかわかりませんでした。
リアルタイムにどれくらいの電気を使用しているかわかるようになる事で、節電の意識を高める、電気料金や温室効果ガス削減出来る事を目的としています。
とは言っても「HEMS」なんて初めて聞いた・・・人も多いでしょう。具体的にはどんなものなのか?
必要な設備は?
まず必要になるのはスマートメーター。これは外側にある電気使用量を示した表示機で、今まではアナログ式だったものを液晶式に変更する事で電気使用量が瞬時にわかる(機種によって異なる場合もある)、電気使用量の測り方が細かく出来る(0,1wh単位で可能)等のメリットがあって、政府は2024年までに全世帯への設置を目標にしています。
しかし、スマートメーターだけでは不十分です。別途計測する機械が必要です。大手電機メーカーパナソニックの場合、AiSEG(アイセグ)と言われる機械、新築住宅向けにはHEMS対応住宅分電盤スマートコスモ、既存住宅向けにはエネルギー計測ユニットを設置。
1台あたり4万円以上します。計測した電気を見るための専用モニター画面もありますが、前述のとおりパソコンやスマホ、パナソニック製のテレビに代替する事も可能です。
どこまで把握できるようになるの?
HEMSを設置すると細かく電気使用量を確認する事が出来て、現状では不可能なコンセント単位までも把握することが可能です。
細かく電気使用量を把握できれば、どれが無駄な電気で、どこを節電すれば電気料金が安くなるのかと言う事がわかる材料です。電気だけではなくて、水道、ガスとの連動も可能となります。
電気使用実績は記録されるため、1日単位、1週間単位でも把握する事が可能で、グラフ等で見る事が出来ます。例えば、暑い日・寒い日・雨や雪の日と言った天候によるもの、不在の日の状況、滞在している日の状況がわかるため、以後の節電に対しての対策を立てやすくなります。
スマホで電気の遠隔操作が可能に!?
どういう事か?と言うと、スマホさえあれば外出中でも自宅内の電気使用状況を知る事が可能。これくらいは容易に想像できるかと思いますが、スゴイのは電気使用の遠隔操作が出来る事。
例えば照明を消し忘れて外出して外出先でその事を思い出した場合、今までは帰宅するまで消灯不可でしたがスマホで遠隔操作できることで、すぐに消灯できるようになります。
それ以外にも、電気料金が安い時間帯を狙って自動運転する事で効率的に家事がこなせる(例えば洗濯物を洗濯機に事前に投入しておき、その時間になったら自動的に稼働開始できるようにする)事も期待出来て、「家事の生産性向上」にも寄与できます。
HEMSの基本的な仕組み
1、電気量を測る機械を配電盤等に設置。
2、インターネットで情報を共有。
3、電力使用データをパソコンやスマホ等で確認
なお自宅にwi-fi環境がない場合は、HEMSのコントロールモニター(前述のパナソニック製の専用モニター画面の事)を購入して確認する事も可能です。
HEMSの必要な機械はパナソニックはじめ、シャープ、東芝等も販売しており、概ね5~30万円前後です。自宅にHEMS機器を設置するため、本体とは別に工事代金(工賃)は別途必要になる事が多いです。
HEMSのメリット・デメリット
メリット
- 電力使用量が目に見えてわかる
- 効率的な節電や省エネが出来る
- 家電の自動制御が可能でスマホ等を経由して遠隔操作可能
- 水道、ガス等の連動も可能になる
- 電力使用量が多い時間に備えて蓄電する事で、ピークカットが可能
デメリット
- どれくらい電気料金が安くなるのかわからない
- 世間的に知られていない
- HEMSに対応した家電が少ない
デメリットについて。どれくらい電気料金が安くなるか明確な事がわかっていません。HEMS導入と未導入に比べて1年間累計でいくら安くなるのか不透明である事、家電とは別の機器を用意するので初期コストや維持費も考えれば、電気料金と合わせると金銭的な負担が大きいと言えます。
初期費用が必要?(タダでは出来ない?)
HEMSと言うのは前述のとおり初期費用が5~30万円かかります。
政府は全家庭への設置を目標としていますが、全ての世帯がこの費用負担できるわけではありません。そもそもHEMSは新電力の新規契約とは異なり無料(タダ)で行う事は出来ません。
基本的には設置者の自己負担です。
国、地方自治体ではHEMS設置に対して補助金は一応あります。条件はバラバラで、HEMS機器も機種やメーカーに指定がある場合、年度途中で急に打ち切りになる、期間限定の補助金等、補助額や補助条件も自治体によって異なります。
多いのがHEMS対応機器を購入するために5~10万円程度補助を受ける事が出来るケースです。
補助金と一言で言っても多数あるため、地方自治体等の行政機関にお問い合わせいただくと詳しい事がわかります。
HEMSの必要性
なんでHEMSが必要なのか?
毎月電気料金の請求と同時にどれだけの電気使用量があったのか伝わりますが、これは1か月の合計の使用量など、細かい情報はわかりません。
細かい情報をわかりやすくしたのがHEMSになりますが、なぜ細かく電気使用量を我々がリアルタイムに把握しないといけないのか?
興味のある人にとっては是非とも欲しい設備ですが、興味のない人も多い中で、安くはないHEMSを半ば強制的に全家庭に国主導で配備しようとしているのか?
これを解くカギは、エネルギー確保と温室効果ガス削減があると言えます。
政府が主導で推進する理由
東日本大震災以降、原発の稼働停止に伴い日本のエネルギー自給率は6%まで低下。東日本大震災前(2011年以前)はこれが20%あったので、大きく下がった形です。
政府は2030年までに25%まで向上させる計画。地域電力会社の発電方法は火力が主体で、元になる石油は輸入に頼っています。再生可能エネルギー(太陽光や風力等)も少しは広まっていますが、全体の発電量からすれば少量に過ぎません。これは発電するにあたり原料を輸入する必要はなく、自分たちで電気を作る事が出来る点が最大のポイントです。
もし、何らかの事情(戦争等の有事や外交・経済的な事)で海外からの輸入が停止されれば、電気どころか食料でさえも日本で消費する分が賄えなくなるリスクが極めて高いのです。
国としては自国で消費する分を自国で生み出すと言うのは半ば当然の事で、それが出来ないようでは将来的に見て(現状でもそうだが)国の存続にかかわる重大な問題となります。
いわゆる「エネルギーの地産地消」を推進して行きたいように見えます。
今や我々消費者であっても太陽光パネル等自宅にあれば電気も作れるし、電気を売る事も出来ます。これからは電力会社が電気を作る・売るではなくて、消費者に電気を作る・売る、使う時は少量を効率的に使用してもらうと言う流れに転換してきているように見えます。
温室効果ガスの削減
これとは別に、温室効果ガスの削減も至上命題で、2013年比で2030年には4割減らす事を目標としています。この4割減らすと言うのは極めて大変な事で、全国民が徹底的に節電しないと達成出来る目標とは言えません。我々の生活の中で、電気使用の無駄遣いを徹底的に排除しないといけません。
その第一歩として必要なのが、現状どれくらいの電気を使用し、電気料金は毎月何円で、毎月何kwh使って、これが1日あたりだと何円・何kwhで、家に滞在している日(どこにも外出しない日)は、どんな家電を稼働させて、これを何時間、何kwh使っているのか、金額換算で何円になるのか・・・と言う事を明確に知らないと、自分がどれだけの電気を使っているのかわかりません。
我々が興味ある事と言えば「電気料金を1円でも安くする事」しかないのがほとんどなので、それを達成するにはどんな無駄があるのか探すのが良いと言えます。
従って、この2点を推進するためにHEMSは必要と言えます。
HEMSと電力小売り自由化の関係(スマートHEMS)
HEMSを使えば電気使用の特徴等がわかるため、それにあった電気料金プランに変更するのが賢い使い方です。
地域電力会社だと、どの時間帯も平均的に利用の多い従量電灯に偏る傾向があります。
新電力各社だと細かく料金プランを設定できる社もあって、普段利用の多い時間帯の電気料金が安くなる等のプランに変更。HEMSを見ながら節電対策を立てることが出来るので、効率的な電気使用する事で節電(=電気使用量削減)と料金プランが安いため結果として電気料金が安くなります。
すなわち、必要最小限だけの電気使用を一般家庭でもさせるために、電気使用量の把握と節電対策の材料=HEMSで、その結果それにあった料金プランの電力会社を選択してもらう、社によって違いはあるものの地域電力会社よりは値段的に安い社が多くプランも充実している新電力を使う事で、効果を最大限出す事が出来ると言えます。
まとめ
HEMSは家庭における電気使用状況がリアルタイムにわかるため、節電効果、効率的な電気使用、電気料金の削減が期待できます。
一方で、初期費用が高額なため、誰でも簡単に用意出来るものとは言えません。知名度もまだまだ低い。普及拡大に対しては電機メーカーが行うよりは、テレビの地デジと同じように国が積極的に行うべきでしょう。
ある程度普及すれば初期費用は大幅に軽減出来るはずです。
電気使用量、電気料金を気にしないのであれば、HEMSは不要の機器でもあるため、所持する事によるメリットも薄く、これ以外の使い方も出来るようにする事が理想です。