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コミュニティ・エネルギーの発展 2 

コミュニティ

エネルギーの自立を目指す日本の自治体

日本のFIT制度では、割高な単価による収益を狙った家庭の太陽光発電、メガソーラー事業、ウィンドファーム事業が主流となっています。どこの国も見られるFIT制度特有のバブル的なトレンドです。

しかし、東日本大震災を契機として、日本でも「自治体自ら地域のエネルギーの安定供給を支えよう」という意識が高まっています。

もっとも有名なのは、東京都の天然ガス発電です。

2020年までに「東京産」の電力を300万kW確保しようとする意欲的な取り組みです。その主たる考え方は、福島第一・第二原子力発電所をはじめとする遠隔地の大規模電源に依存してきた状況を改善するため、「電力の大量消費地である東京都が自ら行動を起こし、東京産のエネルギー確保に取り組む」というものです。

さらに、官民連携のインフラファンドを東京都主導で設立し、民間金融機関からの資金も呼び込んで各種のエネルギー事業への投資を進めることで新電力の育成と電力の安定供給を図る事を狙っています。

同時にエネルギーの効率的な利用や二酸化炭素削減に取り組み、都民にとって「真に自由化された」電力市場作りを国に先んじて推進していこうというものです。

 活発するエネルギー自立化の動き

エネルギーの自立を目指す動きは、地域でも活発化しつつあります。地方では、単にエネルギーを確保するだけではなく、再生可能エネルギー資源を活用するなどして地域振興を図ろうと言う指向がある事が注目されています。

例えば、山形県では2012年3月、「山形県エネルギー戦略」を策定し、2030年までに、「再生可能エネルギーを普及することで電熱合わせて原発1基分に相当する100万kWの電源を開発してエネルギーの安定供給を目指すとともに、県内産業の振興やエネルギー需要の創出などによる地域活性化につなげていくことを目指す」としています。

風力・太陽光(メガソーラー)・地熱については、規模の大きな電源として大規模事業の立ち上げを図る一方、太陽光(建物設置型)・バイオマス・中小水力・地中熱・太陽熱・雪氷熱などについては、分散型のエネルギー源として、家庭や事業所・公共施設への導入を促進し、エリアでも活用できるよう種々の施設を講じていきます。

また、モノづくり産業や農業と連携して技術開発に先行して取り組むとともに、再生可能エネルギーの導入拡大を通じた県内産業の振興、地域の需要創出などを通じた地域活性化につなげていくことをうたっています。

 

長野県でも、2013年3月「長野県環境エネルギー戦略」が策定されています。

もともとは、温暖化対策を目的とした「地球温暖化防止県民計画」がまとめられていましたが、福島第一原子力発電所の事故を契機に、「エネルギーの安定共有を県が率先していく」という姿勢が強化されました。

同戦略の中身を見ると、省エネが重視されていることが注目されます。

2020年にエネルギー需要を2010年比で15%減、2030年に同30%減を目指すことでエネルギー需要の安定化を図るとしている点が戦略の実効性を高めています。

 

福岡市は、2011年10月に「福岡市環境・エネルギー戦略会議」を立ち上げ、2013年3月に提言書をまとめました。

基本理念は「省エネルギー対策と併せて、地域に賦存するエネルギー資源を最大限に活用した自律分散型エネルギーシステムを広域エネルギーインフラとの連携のもとに構築することで、災害に強い安全で安心な都市環境を形成するとともに、地球温暖化防止にも資するわが国そしてアジアのモデルとなる都市を目指す」というものです。

実現に向け、エネルギーのエリアマネジメントを行うために、蓄電や蓄熱などの蓄エネ技術、スマートグリッド、スマートエネルギーネットワーク、熱エネルギーの融通・面的利用、情報通信などを推進するとしています。

 

まとめ

この他にも多くの自治体や地域が自ら主体的に関与するエネルギー事業の立ち上げを検討しています。

これまで、日本の自治体では環境改善や低炭素化をテーマに、都道府県、市町村単位で「新エネルギービジョン」を策定し、その実現を図ってきました。

しかし、東日本大震災以降は、地域がエネルギー自立を目指すことで住民生活の基盤を支えよう、と言う方向性が強まっています。こうした動きに自由化やFIT制度が重なれば、ドイツのように地域が再生可能エネルギー普及の重要な役割を担うことになる可能性もあります。